この指とまれ 43

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この指とまれ

第43話

 

 

 

結局あれから必死に相葉ちゃんもあらゆる業者を当たってはくれたけど
依頼を引き受けてくれる業者は見つからず、ニノのひと言で
バルーンアートの装飾は自分たちの手で準備することが決まった。
実際は業者に委託するより予算はだいぶ安くて済むには済むけど、
俺達の仕事はその1件だけじゃないから当然余計な仕事を増やして
しまった事には変わりない。
2か月も有れば準備はなんとか間に合うとは思うけど・・・
問題はその2か月先まで果たしてニノは会社に留まってくれてるんだろうか?
どっちかというと俺はそっちの方が気掛かりだった。

「はぁ、終わったぁ・・・」
「ゴメンね、おいらのせいで2時間も残業なんて・・・」
「ううん、気にしないで下さい。仕事ですから。」
「でも・・・」
「資材まで手に入らなかったらどうしようかと思ったけど、
資材はちゃんと確保出来たし、大丈夫。何とかなりますって。」
「ニノの対応が早かったからだよ。ホント、助かったよ。」
「さ、それじゃあ帰りましょうか。」
「あ、うん。夕飯食べて帰る?おいら奢るよ。」
「あー、でもかずゆきも待ってるから・・・」
「そ、そうだよね。真っ直ぐ帰んないとカズ君寂しがるよね。」
「一応母さんには頼んであるけど、かずゆき俺とじゃないと
お風呂入りたがらないんですよね。」
「そっか。でもおいらとは嫌がらずに入ってくれたよ?」
「あなたはかずゆきのお気に入りですから。」
「今度またゆっくり時間作ってよ。マジで奢るからさ。」
「えっ・・・あー、でも・・・」

もう二人っきりで逢うのはよそうと言ったのはつい先日の話。
俺の誘いに戸惑うのは無理もない。

「とにかく帰りましょう。俺、送りますから・・・」
「う、うん。」

仕事の発注ミスでバタバタしてて忘れてたけど
そう言えば、翔ちゃんの件が控えてた事を思い出した。
会社辞めようとしてる事は俺には話してくれないだろうな。
流石にこっちからは聞けないしな。

「今朝、俺が代表に伝えた事はお話しましたよね?」
「えっ、あ、うん。」
「もう結論から言ってもいいですか?」
「う、うん。」
「結論はこうです。代表は・・・残念ながらあなた以外に
好きな人がいらっしゃるそうです。」
「そ、そうか・・・」
「大野さんに対しては、親友以外の感情を抱くことは出来ないそうです。」
「うん、そう言うだろうとは思ってた。」
「え?諦めちゃうんですか?」
「うん。」
「本当に好きなの?」
「えっ・・・だって翔ちゃんには好きな人がいるんでしょ?
おいらがどんなに頑張ったところでどうにもならないよ。」
「そうかな。本気で好きなら諦めないと思うけど。
諦めないでいればそのうち風向きが変わったりすることって
俺は有ると思うけどなぁ。」
「へぇ、そういうもんなの?」
「俺だったらって話ですよ。」

諦めずに頑張ってればニノもおいらの事をいつか好きになってくれる
ってことか?

「そういえばニノも好きな人出来たって言ってたけど・・・」
「えっ・・・あ、はい。言いましたけど?」
「誰なの?おいらの知ってる人?」
「言わなきゃ駄目ですか?」
「気になるよ、そりゃあ・・・」
「・・・」

それからニノは全く口を閉ざしてしまい、もう俺にその事は
答える気はないものと思ってた。
ところが、俺のアパートに到着した時だった。
俺がシートベルトを外して車から降りようと思ったら・・・

「大野さん、すみません・・・」
「えっ?」
「もう少しだけ付き合って貰ってもいいですか?」
「い、いいけど、カズ君待ってるんじゃないの?」
「どうしても聞いてもらいたいことが有るんで。ホント、ちょっとだけなんで・・・
心配しなくても直ぐに帰りますから。」

そう言うと、ニノは再びアクセルを踏んで車を走らせた。
目的地があるのかも分からないけど、どこかその表情は
俺には思い詰めてる感じにも見えた。
あ・・・そうか。
会社を辞めたいって相談をしたいのかも。
黙って居なくなるんじゃないかとさえ思っていたから
俺としては自分にも相談してくれるんだと思い少しホッとした。

 

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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