この指とまれ

この指とまれ 48

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この指とまれ

第48話

 

 

そして、いよいよ待ちに待った週末がやって来た。
カズ君が出掛ける前に俺の顔を見たりなんかしたら、
きっと田舎に行きたくないって言い出しかねない。
だから、おばさんがカズ君を連れに来た後にニノが
俺に連絡をくれるって言うから、俺は朝から
自分の部屋の掃除とかをして大人しく連絡を待った。
そして正午過ぎ頃にニノから連絡が入り、
俺はリュックに簡単な着替えとかを詰めて
徒歩でニノの家へと向かった。

「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」

何かお互いに意識しちゃってるせいか、
面と向かうとなんか照れ臭くて仕方ない。
いつも会社じゃこんな事はないんだけど・・・

「大野さん、コーヒー飲みます?」
「えっ、あ、うん。」

ニノがキッチンでコーヒーを淹れてくれてる間
どうにも落ち着かない俺は、カズ君が散らかしっぱなしにしてた
ブロックのおもちゃを箱の中に片付け始める。

「あっ、すみません。かずゆきのヤツ出掛ける寸前までそれで遊んでたから。」
「カズ君、泣いたりしないの?」
「電車が好きなんで、母さんが電車に乗るって言ったら大喜びなんですよ。」
「んふふふ、そっかぁ。今頃電車に乗ってるんだ。」
「ええ。あ、コーヒー冷めないうちにどうぞ。」
「ありがと。それでおばさん何時まで?」
「今度の土曜日には一度戻るって言ってたけど、
婆ちゃんの状況次第では長引くかもしんないって。」
「そっか。心配だね・・・」
「暫く泊まってくれますよね?」
「え?」
「かずゆきが留守の間、うちに居てくれますよね?」
「いいの?」
「だってこういう時でもないと、あなたと二人っきりでゆっくりって
なかなか出来なかったでしょ?」
「う、うん・・・」

ニノもやっぱり同じこと考えてたのかな?
決してカズ君の存在が邪魔だとか、そういう事ではないんだ。
俺達はまだ始まったばかりだし、慌てるつもりなんて全然無いけど
普通に恋人気分というものも味わってみたいと思うのは
ごく自然な事ではあるわけで・・・

「ね・・・大野さん?」
「ん?」

ニノが俺の横に腰を下ろして身体を預けてきた。

「なっ、何?」
「俺と・・・キスしたいって思ってる?」
「ええっ?」
「この前は俺からだったから、今回はあなたからして・・・」
「ニノ・・・」

真横でそんな事言うから、どんな顔してそんな事言ってんのかって
下から顔を覗き込んでみたら、めちゃめちゃトロンとした目をして
俺にキスを要求してるのが分かる。
待ちに待った2度目のキス・・・
俺は既に興奮状態で、ニノをそのまんまフロアの上に押し倒して
四つん這いになり、彼を上から見下ろした。
そしてゆっくりと顔を近付け、柔らかそうなその唇に触れそうになったその時・・・

ピンポーン・・・

あと数ミリってところだったのに、それは中断されてしまった。

「もう、誰だよ?ゴメンね、ちょっと待ってて。」

ニノが素早く身体を起こして玄関へと走って行った。

「和幸は何処?」
「何しに来たの?帰れよ。」
「和幸に逢わせて!」
「あいにくだったな。かずゆきはここには居ないよ。」
「嘘?お願いだから和幸に逢わせて。」
「お前さ・・・もう裁判で全て話はついたんだから
今更母親面するのってズルくないか?」
「和幸に逢わせないとはひと言も言って無いわよね?」
「いいから帰れよ。」
「逢わせてくれるまで帰りません。」
「居ないって何度言えば分かるんだよ。」

ニノが珍しく大声出してるから、聞こうと思わなくても
リビングまでその声は筒抜けだった。
どうやら、突然の来客はニノの別れた嫁さんらしい。
つまりはカズ君の実の母親ってこと。

「どうしたの?」
「あ、大野さん。何でもないの。」
「おたくはどちら様?」
「お前には関係ないよ。」
「和幸に逢わせてくれたら直ぐに帰るって言ってるのに。」
「あの、本当にカズ君は今ここには居ませんよ。」
「えっ?何処に行ったの?」
「母さんの田舎だよ。」
「ニノ、おいらはいいから上がってもらったら?」
「大野さん・・・」
「こんな玄関先でご近所の目もあるだろうに。
とにかく中でゆっくり話したら?」
「ええっ?でも・・・」
「結構です。和幸が居ないのならもうこの人とお話する事は
何も有りませんので・・・それじゃ、失礼します。」

彼女はそう言ってさっさと帰ってしまった。
リビングに戻り、ソファーに腰掛けたニノは
フウーッと大きく溜息をついて頭を抱え込んだ。
折角さっきまではイイ雰囲気だったのに・・・
一瞬にして現実に引き戻されてしまった感じで
しかも暫くニノは放心状態でなんとも声も掛け辛く
そこには重苦しい空気が漂った。

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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