この指とまれ
第58話
こうして身も心も一つになった俺達は身を寄せ合って眠りに就いた。
翌朝目が覚めたら、隣にすやすや眠ってるニノの横顔があって
また夕べの事を思い出し、嬉しくて一人でニヤ二ヤが止まらない。
あぁ・・・なんて幸せなんだろう。
夢ならこのままずっと覚めないでって思ってしまう。
ニノと結婚出来たら、毎日この幸せが続くんだ。
俺はもう勝手にニノとの暮らしを思い描いてた。
仕事から帰ればニノが夕食の支度をして待っててくれてて
ニノと可愛いカズ君が俺に駆け寄り「お帰りなさい」と出迎えてくれて
そして二人からハグされる。
日曜日は3人で遊園地やイベントに出掛けたり
時にはちょっと遠くに旅行したり・・・
「んっ・・・何一人でニヤけてるんすか?」
「えっ?お、おはよ。」
「おはよ・・・」
「ニノ?今日は何か予定有るか?」
「え?特には有りませんけど?」
「そうか。それじゃ今日はおいらの実家行くぞ。」
「え・・・な、何で?」
「うちの家族に紹介するに決まってるじゃん。」
「え?え・・・ま、待って下さいよ。紹介ってどゆこと?」
「結婚するんだからお相手として紹介するんだよ。」
「ちょっ、本気なの?」
「おいらは大真面目だよ。」
「ご家族いきなり俺なんか連れてったらひっくり返るんじゃないの?」
「ニノは心配しないで良いよ。黙って着いて来てくれればそれで十分だよ。」
「でも・・・」
「俺達相性も悪くなかったじゃん。何も問題ないだろ?」
「そ、そりゃそうですけど・・・」
「え?もしかしてニノはおいらじゃ不満なの?」
「そんなことはないけど・・・」
「ねえ、ちゃんと答えてよ。おいらと結婚して?」
「あ、あのね・・・大野さん、結婚って二人だけの問題じゃないんですよ?」
「そんなの知ってるよ。」
「あなたの家族も勿論だけど、うちの親だっているわけで・・・」
「絶対に許して貰うよ。っていうかさ、おいらが聞いてるのはニノの気持ちだよ。
ニノはどうなの?おいらと一緒になりたくないの?」
「そ、それは・・・」
「うん、それは?」
「出来る事なら・・・一緒になりたいですよ。」
「うん、それじゃ決まり。」
「ま、待ってよ。」
「まだ何か有るの?」
「俺、独り身じゃ無いし・・・和幸だって居るし・・・」
「もう、何度言ったら分かってくれんのさ?おいらはニノを愛してる。
だから、その愛する人の大切な子供もおいらにとっては宝物なんだよ。
うちの両親さ、孫の顔見たいって以前からずっと言っててさぁ、
だけどおいらこれまで結婚願望なんて全然無かったんだよ。
ニノと出会わなかったら多分このままずっと一人だったと思う。
だから、うちの親は泣いて喜んでくれるって。」
「そ、そうかなぁ・・・」
「ニノのご両親にはおばさんが帰って来てから挨拶に行く。」
「反対されるかもよ?」
「それでもいいよ。認めてくれるまでおいら諦めないから。」
「大野さん・・・」
「智でいいってば。」
「うん・・・智、好き。」
あぁもう、朝から破顔するほどニノが可愛くて仕方ない。
寝癖で髪はぐしゃぐしゃだし、まだ眠そうな寝惚け眼なんだけど
どうしてそんなに可愛いんだよ?ってくらい可愛くて
そんなニノから「好き」って言われて
これがじっとしてられるかよって話・・・
俺は思わず彼を引き寄せギューッと胸の中に抱き締めた。
「く、苦しいよぉ・・・」
「あ、ゴメン、ゴメン。つい・・・」
ということで、善は急げ。
一応今日が仏滅でないことだけをカレンダーで確認すると
俺は実家に電話を入れて午後からニノを連れて
俺の両親に合わせる段取りをした。
つづく