この指とまれ

この指とまれ 60

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この指とまれ

第60話

 

 

カズ君が保護されたと聞いて大急ぎで戻った俺は
何時もの愛くるしいカズ君の姿を見てホッと胸を撫で下ろした。

「ああーっ!おいたん!」
「カズ君、無事だったかぁ・・・良かったな。何処で保護されたの?」
「近くの公園。ベンチに座ってるかずゆきをお巡りさんが保護してくれたんだ。」
「公園?一人で公園なんか行けるのか?」
「いや・・・ね?かず?お前誰かと一緒に居た?」
「ううん、かじゅね、ひとりだったよ。」
「かーず、正直に言えよ。」

カズ君はひたすら首を横に振ってる。

「まぁ、無事だったんだ。良かったじゃない。」
「・・・行きましょう。大野さん。」
「え?」
「帰りますよ。」
「ま、まだゆっくりしてていいよ。せっかくカズ君に逢えたのに。」
「俺、行かなきゃなんないとこ有るんで・・・」
「ええっ?今から?」
「母さん、金曜日の夜にかずゆき迎えに来るからそれまで頼んだよ。」
「え?もう帰るの?」
「ちょっと行かなきゃならない所があるんだ。」
「何よ、折角ここまで来たのに・・・」
「とにかく金曜日まで良い子にしてるんだぞ?
 知らない人には絶対着いてったら駄目だからね。
 あっ・・・知ってる人にもか。」
「お、おばさん、それじゃまた来ます。」」

まあ、どっちみちもうカズ君は寝る時間みたいで
俺達が居ても興奮して眠れなくなるとマズいからっていうのはあるけど
幾ら何でもカズ君が寝てから帰っても良さそうなのに
ニノは何を慌ててるんだろう?
行かなきゃなんない所って何処なんだろう?
結局俺達はとんぼ返りで東京へ戻って来た。
ニノは自宅方向とは全然違う方へと車を走らせてる。

「どうしたの?急に・・・何処行こうとしてるの?」
「あいつの家です。」
「あいつ?」
「かずゆきを連れ出した犯人ですよ。」
「ええっ?何それ?犯人って誘拐犯ってこと?」
「そうです。」
「だ、誰?ニノが知ってる人なの?」
「ええ。もぉー何でもっと早く気付かなかったんだろう。
俺ってバカじゃないの?」
「は?ニノ・・・?」
「元嫁ですよ。美紗紀。」
「えっ?き、昨日の?」
「そう。覚えてるよね?昨日あいつ和幸に逢わせろって家に来たんだよ。
まさか母さんの田舎まで行くとは思って無かったから・・・
あいつも一度連れてったこと有るんですよ。」
「だ、だからって、黙って連れ出したりするかなぁ・・・」
「よっぽど逢いたかったんでしょうね。」
「ホントに彼女が?」
「間違いないです。かずゆきの態度がおかしかったもの。」
「そ、そう?」
「恐らく誰に何を聞かれても自分の事は言っちゃ駄目だとか
言って聞かせたに違いありませんよ。」
「だけど証拠もないのに・・・」
「証拠なんてなくたって、全て考えれば分かる事です。」
「逢ってどうするの?」
「次こんなことしたら、弁護士に頼んで訴えるって
釘を刺すに決まってるでしょ。元々家裁では全て決着は着いてるんです。
100%会うな、とはこちらから言えないにしても誘拐みたいな真似なんて
絶対に許せませんよ。」

ニノの気持ちは痛い程分かるんだけど
どう見ても今のニノは冷静とは言えない。
「何を言ってるのか分からない」と相手が全面否定してきたら
全部話は終わっちゃう気もしないでもない。
そうなると、普通に喧嘩しに行ってるのと同じなんだけど。

「着きました。ここです。あなた、ここで待ってて下さい。直ぐに戻るんで。」
「あ、いや・・・おいらも一緒に行くよ。」

流石に完全に冷静さを欠いてる今のニノを
一人彼女の所へ行かせるわけにはいかない。
美紗紀さんのマンションに着くと、その真横のコインパーキングに車を停め
二人で車を降りて彼女の部屋に向かった。
呼び出しベルを鳴らすも、彼女は不在の様で何の応答も無い。

「まだ戻ってないですね。ちょっと早過ぎたかな・・・」

そんな事を言っていたら、カツカツとヒールの靴音が響いてきて
その足音に二人で振り返ると、あの美紗紀さんが
部屋の前で待ってた俺達に気付き、何か慌てた様子で
急にくるりと方向転換すると、俺達から逃げる様に
次の瞬間その場からエレベーター方向に猛ダッシュし始めた。

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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