この指とまれ

この指とまれ 61

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この指とまれ

第61話

 

 

「おい、待てよ!」

逃げる美紗紀さんを走って追い掛けた。
エレベーターのボタンを連打するもニノが追い付いて
美紗紀さんの腕を捕まえた。

「は、離してよ。」
「どうして逃げるんだよ?お前さ、何か疚しいことが有るからだろ?」
「な、何のことよ?」
「わざわざ母さんの実家まで行ってかずゆき連れ出しただろ?」
「知らないわよ。」
「それじゃどうして逃げんだよ?」
「べ、別に逃げてなんかいない。あなたが勝手に追い掛けて来たんじゃない。」
「嘘言うなよ!」
「ニノ・・・声デカいよ。」
「あなたは引っ込んでて!」
「ホント、ご近所迷惑だからもう帰って。」
「そうはいかない。俺はお前に話が有ってここに来たんだから。」
「どうして?私はあなたに話とか無いんだけど。」
「こっちには大有りなんだよ。」

ニノにしては珍しく興奮気味で声を荒げてる。
美紗紀さんは俺から見ても確かに確信犯のようだ。
ニノとさっきから目を合わそうとしないし、
ニノに問い詰められて相当機嫌が悪い。

「どうして黙って連れ出した?」
「だから・・・何のこと?」
「かずゆきから聞いたから、もう嘘は通らない。」
「か、和幸が?」
「今更母親面して何がしたいんだよ?お前はもう母親でも何でも無いよ。
家裁でも決着は着いたじゃない。もう二度とこんな事しないでくれ。」
「あの子の母親は私よ。」
「何を今更・・・」
「和幸を返して。」
「ふざけんなよ。」
「あなたは自分一人でも和幸を育てるって言ったけど
結局お母さんに頼りっ放しで、あの子の面倒みてるのは
殆どお母さんなんでしょ?やっぱり無理だったのよ。
仕事と育児を両立させるなんて出来っこないのよ。
和幸は私が育てます。お願いだから和幸を返して。」
「勝手な事言うなよ。」
「美紗紀ちゃん、だっけ?あのさ、ニノとはもうより戻す気は無いの?」
「ちょっ、お、大野さん?何言ってるの?余計な事言わないでよ。」
「だって、カズ君は自分が育てたいわけでしょ?
それならニノともまた一緒に暮らしたいんじゃないの?」
「それは無理だよ。だいいち、あなた俺と一緒になるって言いましたよね?」
「へえ、再婚するんだ?」
「おいらはニノの事が好きだし、一緒になりたいけど
カズ君の為には二人が又一緒に仲良く暮らすって事が
一番なんじゃないかって思うんだよね・・・」
「こいつは浮気してるんですよ?そんな奴に子育てなんか
絶対出来る訳が無いです。」
「もう別れたわよ。あんな奴・・・」
「ふうん。別れたから寂しくなって和幸を返せだ?
どんだけ都合いいんだよ?」
「ねえ、もう一度ゆっくり二人で話合ったら?
感情的になって言い争ってても結論は出ないだろ?」
「もう結論なんてとっくに出てますよ。
俺達の関係は修復不可能です。それに・・・
俺にはもうあなたという人も居るし。」
「美紗紀さん?」
「はい?」
「おいらとニノで責任もってカズ君は育てるよ。約束する。
勿論逢いたいときは何時でも逢いに来てくれて構わないよ。
その代わり、もう二度と今日みたいな事しないって
ここでニノに約束してくんないかな?」

美紗紀さんは俺の言葉を聞いてポロポロと涙を零した。
そして、ニノに頭を深く頭を下げて「ごめんなさい」と謝ってくれた。
何とかその場を丸く収めて俺とニノは車に戻った。

「どうして・・・?」
「え?」
「何であんな事言ったの?」
「あんな事?」
「よりを戻せとか・・・」
「あぁー、あれか。」
「あれかって・・・酷いよ。」
「いや・・・ゴメン。でもさ、美紗紀さんはやっぱカズ君の
お母さんなんだよ。産んだ我が子を可愛くない母親なんて
居ないんだよ。だから・・・」
「だから、俺があいつとやり直すって言ってもあなたは平気なの?」
「平気なわけ無いじゃん。」
「だったらどうして・・・?」
「カズ君の為かな。」
「悪いけど、もう俺と美紗紀は終わってますから・・・」
「そうだな。夫婦の事に口を挟むのは違ってたな。ゴメン。」
「俺だったら無理だな・・・」
「ええっ?」
「もしも俺が大野さんの立場だったとしたら、
俺は幾ら子供の為とは言え、あなたの事は簡単に手放せない・・・」
「ニノ・・・」

俺はカズ君の一番の幸せを想って発言したつもりだったけど
確かにそれはニノが言う通り、自分を犠牲にしなくてはならなかった訳で
その発言によって、俺はニノを確実に傷付けてしまった事も自覚がなかった。
帰りの車中で、猛反省した俺はもう二度とあんな軽率な事を
何が有ったにせよ言うまいと心に誓った。

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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