この指とまれ

この指とまれ 65

Pocket

この指とまれ

第65話

 

 

それからその金曜日がやって来た。
いつも通り仕事を終えて、俺とニノは二人で
お母さんの実家へと向かった。

「かずゆき、良い子にしてたか?」
「あっ、パパ!おいたん!」
「お迎えに来たよ。」
「あら、大野さん、この間はゴメンなさいね。
何のお構いも出来なくて・・・」
「あ、いえ・・・」
「母さんはどうするの?一旦戻るの?」
「あ、父さんをほったらかしにしてるから
一旦戻らないとね。」
「ちょっと母さんに話が有るんだけどさ・・・」
「ええっ?何よ?」
「とにかく移動の車の中で話すから・・・」

それをニノが伝えた後で若干の緊張感が走った。
ニノの話ではおばさんはニノの再婚には反対派らしいから
ここからどう切り出すかが問題だ。
おばさんとカズ君を後部座席に乗せて
俺は助手席に座り、車は東京の自宅に向けて走り出した。

「話って何よ?」
「あ・・・うん・・・それがさ・・・」
「ニノ、おいらから話すよ。」
「え?う、うん・・・」
「あの、驚かないで聞いて貰えますか?」
「え?やだ、何なの?」
「僕とニノは真剣にお付き合いさせて貰ってるんです。」
「お、お付き合い?」
「はい。」
「ああーっ、お友達としてってことね?」
「あ、いえ・・・そうではなくて・・・
僕らは結婚を前提にお付き合いしています。」
「け、結婚?」
「はい・・・」
「え?ま、待って。だって、あなた達どっちも男じゃないの。」
「母さん、そんなの関係無いんだよ。」
「関係無いって・・・えっ?」
「おばさんが驚かれるのも無理ないです。
だけど、僕ら真剣に愛し合ってるんです。
カズ君の事は二人で責任もって育てます。
ニノには仕事を辞めて貰って完全に家庭に入って貰います。
二人の面倒は僕がみていくつもりなんで。」

おばさんはあまりの驚きに最初は言葉も出ないみたいで
両手で顔を覆って、そのうち頭を抱え込んでしまった。
そりゃ無理もないだろうな。
息子が同性愛だと聞かされただけでも驚きだろうに
そのうえ結婚の話まで持ち出されたら・・・
それは普通の反応だとは思う。

「ねえ、母さん?許してくれるよね?」
「和幸が大野さんをとても慕ってる事は母さんも知ってるけど
まさかそんなことになってたなんて・・・
大野さん?うちの子なんかでいいの?
わざわざ子連れのうちの子なんか選ばなくたって
世の中には沢山素敵な方はいらっしゃるでしょうに・・・」
「和也君じゃないと駄目なんです。」
「でもねぇ・・・」
「何だよ?母さんは喜んでくれないの?」
「そりゃあ、今はいいかもしれないけどねぇ・・・
和幸が大きくなって物心着いた時に何と説明するつもりなの?
自分の両親がどちらも男だって事実はずっと付き纏うのよ。
それならば何も形なんかに拘らないでも、このままお付き合いだけを
続けた方が良いんじゃない?」
「もうさ、俺達はとっくに決心してるんだよ。
母さんが何と言おうと俺達は一緒になるから。」
「ニノ・・・」
「少し冷静になりなさいよ。」
「俺は冷静だよ。」
「あんた一人の事ならあたしは止めないのよ。」
「母さんは確かに再婚は駄目だって言ってたけどさ
それは相手が女性の場合であって、和幸に継母が出来るのは
賛成できないって話だったでしょ。その点大野さんは
男だから一緒になっても子供が出来る心配もないし
何の問題も無いわけじゃん。いくら仮に相手が女性でもさ
ずっと夫婦喧嘩ばかりしてる環境で子供育てるよりも
全然マシだと俺は思うけど。」
「お願いします。おいら絶対二人を幸せにするって約束します。」
「どうしても一緒になるって言うんなら・・・
和幸はあたしが育てます。どうぞ、二人で好きな様になさいな。」
「ええっ?」
「か、母さん?」

すんなり認めて貰えるとは最初っから思ってなかったけど
まさかの展開だった。
カズ君を人質に取られた形だ・・・これは想定外の展開。

「もう、母さん頼むから勝手なこと言わないでよ。」
「何でよ?子供は私が代わりに育てると言ってるんだから
あんたは万々歳じゃないの。好きな人と好きな様に
一緒になればいい。大野さん、至らない息子だけど
どうぞ末永く幸せにしてあげて下さいね。」
「いや・・・あの・・・」

これは困った事になった。
もう今は何を言っても聞き入れても貰えない雰囲気。
俺とニノは一瞬顔を見合わせて目くばせした。
もう、これ以上この場を頑張ったところで無理だ。
俺達はとりあえず作戦の立て直しを図る必要がありそうだ。

 

 

つづく

Follow me!

蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。