この指とまれ

この指とまれ 71

Pocket

この指とまれ

第71話

 

 

 

そして数日が過ぎ、俺はニノのご両親に会う事になった。
ニノは一度は俺との結婚を諦め掛けた。
それはおばさんを泣かせてしまった事が相当ショックだったからだ。
離婚の時、ご両親が引き留めるのも聞かずに
話を進めてしまったらしくて、再婚ともなると
色々と慎重に考えるようになるのは当然だと思う。
だけど、息子の幸せを願わない親はいない。
きっと誠実に話をすれば、ご両親だって分かってくれるはず。
とはいえ、ここ数日ろくに寝ないで色々考えてはみたんだけど
結局これと言って秘策を思い付いた訳でもなく、
もしかすると、俺が話したところで納得しては
くれないかも知れないけど・・・
何もしないでこのままニノと離れ離れになるのは辛過ぎる。
だから、悔いが残んないように俺は気が済むまでご両親に
頭を下げるつもりでいる。
あらかじめニノがおばさんに連絡して、
俺らが今日、実家にお邪魔することは伝えてあった。

ニノの実家に到着すると、俺達が思ってた程
緊張感も何もなくて、普通におばさんが出迎えてくれた。

「いらっしゃい。待ってたのよ。」
「ばーたん、ほらっ、これね、おいたんにもらったの。」

来る途中で買ってあげたラッコのぬいぐるみを大事そうに
抱えてカズ君が自慢げにおばさんにそう言った。

「あら、可愛い。良かったねー、かず。」
「うんっ。」
「こんにちは。せっかくの休日にお邪魔してすみません。」
「ささっ、狭い所だけど上がって。」
「お邪魔します。」

おばさんの態度が普通というより、妙にご機嫌だから
俺とニノは玄関先で顔を見合わせて頭を捻った。
リビングに入ると、ローテーブルの上にめちゃめちゃご馳走が並んでた。
ど真ん中にはメインと言わんばかりのそれはそれは立派な
鯛の活き造りが置かれてた。

「えっ・・・?母さん、今日って何かお祝いだったっけ?」
「まあ、いいから座りなさい。」

もしかして、おじさんとおばさんの結婚記念日とかかな?
だとしたら大失敗だぞ?
何にもお祝いの品準備せずに来てしまった。
俺はニノと隣同士で座り、カズ君は俺の膝の上に座った。

「ちょっと、かずゆき・・・何でパパんとこ座らないんだよ?」
「おいたんがいいの!」
「ラッコで手懐けるの止めて貰っていいですか・・・」
「おいら手懐けてなんていねえし。」
「二人とも、今日は泊まっていきなさい。」
「えっ?」

おじさんがそう言いながら、日本酒の一升瓶を抱えてきた。

「父さん、昼間っから酒かよ?」
「祝いの席なんだから、酒くらいいいだろう。」
「い、祝い?」
「とにかく乾杯が先だ。」

おじさんは俺に、おばさんはニノのグラスに酒を注いでくれて
何か訳が分かんないけど、言われるままに乾杯をした。

「え・・・マジで何なの?」
「実は、あれからずっと父さんと話合ったのよ。」
「話し合うって?」
「あなた達の結婚についてよ。」
「それって・・・もしかして・・・」
「あんたとかずちゃんにとって、何が一番幸せなのかって考えたらね、
やっぱり大野さんと一緒になった方が良いんじゃないかって
そういう結論になったの。」
「で、でも、ハワイは?」
「勿論会えなくなるのは寂しいわよ。でも、今はネットで動画とかも
遅れる時代だし、一年に一度は戻ってきてくれるでしょ?」
「そ、そりゃ勿論。」
「今日はささやかだけど、そういうことで仮祝言ってことだよ。」
「と、父さん、母さん・・・」
「大野君、そういう訳だから、うちの子と和幸を宜しく頼みますよ。」
「はっ、はい。絶対何が有っても幸せにします。」

意外な急展開だった。
やっぱり思ってた通りだ。息子の幸せを願わない親はいないんだ。
それでも、おばさんは少し涙ぐんでて、それを見た俺は
これから二人をどんなことが有っても幸せにしなくては・・・
という責任が圧し掛かって来た。
ニノがテーブルの下で俺の手を握り、俺はその手をギューッと握り返した。

「さぁ、遠慮はいらないから、どんどん食べて。」
「はい、それじゃ頂きます。

俺はおじさんからしこたま酒を盛られて
調子に乗って覚えてないくらいの量の酒を飲んだ。
途中から酔っ払って記憶が無いけど、
とにかくご両親の気持ちがそれだけ嬉しかったんだと思う。

 

 

つづく

Follow me!

蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。