この指とまれ

この指とまれ 74

この指止まれ

第74話

 

 

side nino

 

 

ハワイ行きが刻一刻と迫る中、仕事の方は出発のぎりぎり1週間まで
勤務するという約束で、俺は通常通り大野さんと会社に出勤してた。
そんなある日、代表がとある一人の青年を連れてフロアーに現れ
社員全員に向かって招集を掛けた。

「ちょっと、仕事中悪いけど皆集まってくれるかな?」

俺達は急遽会議室に集められた。
どうやら新人君の紹介が始まるらしい。
俺が会社を辞める事になってるから、てっきりその後任に
採用された人だと俺は思ってた。

「それじゃ、紹介します。今度ハワイ事業所で
 大野さんの秘書を任せる事になった知念君です。
 知念君からもひと言お願いします。」
「はい・・・皆さんはじめまして。この度、皆さまの会社で
 共に働くことになりました、知念優紀と申します。
 色々とご指導のほど宜しくお願いします。」

智の秘書?
俺は何も聞いて無くて、直ぐに隣の智の顔を覗き込んだ。

「秘書ってどういうこと?」
「あっ、おいらニノに言ってなかったけ?」
「聞いてませんよ?」

なんだか無性に胸騒ぎを覚えた。
だって、どう見ても俺よりも若い。
しかも秘書なんてうちの代表には着いて無い。
ハワイ事業所の代表になると言っても
やることはうちの代表と一緒じゃないの?
何なの?秘書って・・・そんな好待遇でいいわけ?

「・・・そういうことで、知念君は今日からハワイ転属まで
会社の概要についてここで研修をして貰う事になってるので
皆さんからも色々と分からないことは指導してあげて下さい。
あ、それから大野さん、あとで僕の部屋に来て貰える?」
「う、うん・・・」
「はい、それじゃ解散です。」

紹介が終わると、皆ぞろぞろと会議室を出てフロアーに戻り始めた。

「そんじゃ、おいらちょっと翔ちゃんとこ行って来るわ。」
「え?あ、うん・・・」

智がそう言って代表の部屋に言ってしまった。

「二宮さん。」
「あ、菊池君・・・」
「知ってますか?今の秘書の知念ってヤツの事。」
「え?ううん。俺何も聞いて無かったから、今初めて知ったんだ。」
「父親はローネットの社長ですよ。」
「ローネット?」
「知らないんですか?お見合いサイトとかで有名な会社ですよ。」
「あ、ああー、聞いたこと有るわ。へえ・・・そこの息子が何でまた?」
「うちはウエディングプランをローネットで契約してる顧客に
 提供して利益を得てるんですよ。」
「へえ、知らなかった。」
「こっちは与えられた案件だけを単純にプランニングするだけなんで
 顧客がどうこうって営業の事はあまり関係は無いですからね。」
「それじゃ、こういう仕事は慣れてるってことか。」
「ええ。それと、彼は4か国語が話せるらしくて、大野さんの
 通訳も兼ねてるそうなんです。」
「そっか、大野さんは英語も話せないものね。それにしても
 なんでそんなに彼の事詳しいの?知り合い?」
「代表が言ってたんで・・・」
「代表が?」
「あの、二宮さん、気を付けた方が良いですよ?」
「え?何を?」
「考えてもみてくださいよ。秘書って四六時中
 代表にくっ付いて仕事するんですよ。
 下手すりゃ結婚相手の二宮さんなんかよりも
 一緒にいる時間が多くなるかも知れないんです。」
「うん・・・それが?」
「それがって・・・心配じゃないんですか?」
「心配なんかしてどうするの?だって彼は仕事で一緒にいるんだよ?」
「二宮さんも分かってないなぁ。」
「ええ?」
「一緒に居る時間が長いと、勘違いするヤツもきっといるんですよ。
 特にあの人・・・あ、大野さんのことですけど、
 誰にでも優しいじゃないですか。絶対危険ですって。」
「そ、そんなこと言われても俺は人事に口は挟めないし・・・
 あの人は大丈夫だよ。俺は信じてるもの。」
「そうですか。それならいいんですけど。」

菊池はハワイ行きのメンバーに入っていない。
だから心配なんだと俺にそう言ってきかなかった。
口では大丈夫だと言ったけど、全く不安が無いと言ったら嘘になる。
だって、俺は前の結婚で実際相手に浮気をされたという経験がある。
智はそんなことしないと信じてはいるけど
菊池が言う事もあながち無いとは言い切れない。
せっかくハワイ行き楽しみにしてたのに
秘書という存在が現れた事で、
何だか嫌な雲行きになりそうな予感がして
ちょっとだけ俺は憂鬱になった。

 

 

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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