この指とまれ 75

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この指とまれ

第75話

 

 

side nino

「大野さん、これ来月のプランニングの予算と見積もりですけど
一応目を通してもらっていい?」
「ああーゴメン、おいらもう今月は普段の仕事は出来ないんだ。
それは相葉ちゃんに見て貰ってくれるか?」
「え?何で・・・?」
「知念君の研修に付き合う様に言われててさ・・・」
「ふうん・・・」
「え?何?」
「いや・・・それって付きっきりって事ですか?」
「う、うん。そうだけど?」
「二人っきりで?」
「は?ち、違うよ。翔ちゃんも一緒だよ。」
「ふうん・・・」
「えっ?どうして?」
「べつに・・・」
「べ、別にって・・・」
「大野さん、そろそろ行きましょうか。」
「あ、知念・・・う、うん。先に行っててくれるか。」
「はい。それじゃ先に行ってますね。」
「研修受けるのにわざわざお迎えに来るなんて
出来た秘書さんですねぇ・・・」
「ほ、本当だよね。勝手に先に行ってくれればいいのにな。」

智は連日あの秘書の知念ってヤツの研修に付き合わされる事になり
通常の仕事から外れてしまった事で
会社で俺と会話を交わす事も殆どなくなった。
仕事から離れれば、いつもの智には変わりないんだけど
何か俺は面白くなかった。
数日後、突然智から飲みに誘われたんで、
帰りが遅くなると言われて俺はてっきり代表とだろうと思い、
仕方なく一人で寂しく帰宅した。
日本でこうして飲みに出る機会も残り僅かだろうし
男の付き合いに口を挟む気も無いから、
かえってどうぞって感じで、俺は俺で
ハワイに持ってく荷物の整理に夢中になってて
ふと気が付いたら午前0時を回ってた。
智、何やってんだろう?明日も仕事なのに・・・
そう思った時、家の前にタクシーらしき車が停まり
その後直ぐにインターホンが鳴った。
鍵は持ってる筈なのに、酔っ払ってるな?
仕方なく玄関の鍵を開け、扉を開いたら
そこにはベロベロに酔った智を担ぐようにして
あの知念が立っていた。

「こんばんは。」
「え・・・」
「大野さん、途中からもうこんなになっちゃって・・・
ほら、大野さん?ご自宅着きましたよ?」
「んん?〇$%#△*・・・」
「ちょっ、智?何でこんなになるまで飲んでんだよ?」
「あ、怒んないであげて下さいね。大野さんも・・・
色々ストレスお有りなんですよ。」
「はぁ?」
「それじゃ、僕はこれで失礼しますね。おやすみなさい。」
「え、あ、うん・・・何かゴメンね。ありがとう。」

酔い潰れた智は玄関で完全に脱力してへたり込んでしまった。

「ちょっと、智?こんな所で寝るつもり?」
「うっ・・・おっ?ニノちゃん?」
「もぉー、何がニノちゃんだよ!ほら、立って!立てる?」
「ううっ・・・無理でしっ・・・」
「もぉ!仕方ないなぁ。俺にちゃんと掴まって。よいしょっと・・・」

何とか智を立ち上がらせ肩を担いでリビングのソファーに座らせた。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトル取り出して
智に手渡した。

「ほらっ、これ飲んで!」

口の端から水を零しながらもゴクゴクとそれを喉に流し込む智。
こんなに酔った智を見るのは初めてかも知んない。
色々ストレス・・・?
俺と結婚してからストレスになってるとでも言いたいの?
冗談じゃないよ。
知念の言葉を思い出して一気に気分が悪くなった。
それにしても、何なの?
代表と一緒だとばかり思ってたのに、まさか
知念と二人で飲んでたの?
それって今のこの時期にどうしても必要?
歓迎会なら会社全体でするべきでしょ。
どうして智がそんなことしなきゃなんないんだよ?
この場で色々問い詰めたいところだけど、
本人はベロベロに酔ってしまってるし
ソファーに寝っ転がってそのまんま目を閉じてるから
話になんない。

「はぁっ。もう、マジで何なんだよ?」

俺は苛立ちを抑えて仕方なく二階からタオルケットを持って来る。
酔っ払いの智にそっとそれを掛けてその場を離れようとしたら
ガッツリ腕を捕まれてそのまま身体を引き寄せられた。

「ちょっ、危ないじゃん!何すんだよ。」
「んふふっ・・・ニノちゃん・・・アイシテルよ・・・」
「ふざけないで。」
「チューして・・・ニノちゃん・・・」
「もぉ、何なのよ?」

だけど幾ら酔っ払ってても愛してるなんて言われたら
俺も同じだから、やっぱり怒る気にはなれない。
それでもキスするのはちょっとしゃくだから
フニャフニャな智の鼻を摘まんで

「そんだけシッカリしてるなら寝室で寝なさいよ?」

って言ったら、その手を払い除けて
身体を起こした智が俺をソファーに押し倒した。

「ニノがしてくんないなら、おいらがするっ。」

そう言って真上から智の唇が近付いて来る。

「ううっ、最悪、酒臭っ!」
「んふふふ・・・我慢しろ。」

どんなに酒臭くても、ベロベロに酔っ払ってても
やっぱり俺はこの人が好き。
知念と二人でこんなになるまで飲んでた事は許せないけど
こんなことを出来るのは俺にだけだから・・・
本当に惚れた弱みだなって思いながらも
アルコール臭のプンプン漂うキスを俺は何の抵抗もなく受け入れた。

 

 

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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