この指とまれ

この指とまれ 9

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この指とまれ

第9話

 

 

「だけどマジで笑っちゃったなぁ。」
「えっ?」
「ほら、あそこの教会の神父さん。あなたと僕の事をガチで新婚カップルと思って話してましたよね。」
「ああー。もうホントビックリしたよ。だって依頼主本人達が打ち合わせに来たって信じ込んでたからさ。」
「普通ならば男二人だからあんまり間違えることもないんでしょうけどね。丁度タイミング悪く
ここ最近ゲイカップルの挙式が続いてた、みたいな感じだったらしいから全然疑わなかったんでしょうねぇ。」
「大体、相葉ちゃんだよ。悪いのは。電話でアポイント取った時にちゃんと会社から職員が伺いますって
名前まで言っておくのが常識なのにさ。そりゃ先方だって戸惑うだろうよ。」
「ウフフフッ・・・まぁ無事に打ち合わせも出来た事だし、いいじゃないですか。」
「そ、そりゃまそうだけど。」
「相葉さん達も別件が重なってて忙しいとか言ってましたから、責めないであげましょうよ。」
「そ、そうだな。」

ホテルの部屋に戻り、食事も風呂も済ませた俺達は缶ビールを飲みながら
とりあえずゆっくり寛いでいた。
ニノはテーブルの上に仕事用のノートパソコンを取り出して
今日の打ち合わせの内容を入力し始めた。

「ええっ?今から仕事すんの?もう就業時間外だから明日やりなよ。」
「いえ、大丈夫です。そんなに時間掛かりませんから。」
「真面目だな・・・」
「そりゃそうでしょう。僕はまだ駆け出しの新人なんだし。
ここにあなたと遊びに来てる訳じゃないんだし。」
「何かゴメンね。」
「えっ?何がですか?」
「だって、せめてプライベートタイムくらい一人になりたかっただろうに。
仕事終わってからもおいらみたいな会社の人間と顔合わしてなきゃ駄目だなんて
おいらがニノだったら耐えられるか分かんないよ。」
「うーん、どうでしょうね?同行が大野さんとだったから良かったのかも。」
「ええっ?」
「他の人だったら別室お願いしてたかも。」
「な、何で?」
「何でって・・・大野さんとはなんとなく最初から気が許せる、みたいな?」

テーブルに片手で頬杖ついて、ちょっと上目遣いに俺を見ながらそんな台詞を平然と言い放つ。

「し、知んないよ?おいらもしかしたらめちゃめちゃ厄介者かもしんないじゃん。」
「フフフフ。それはないでしょう。僕、こう見えて結構普段あまり人を信用しないんですよね。
そんな僕が直感で大野さんは大丈夫だって思えたくらいだから僕の目に狂いは無いです。
現に今全然気を遣わずに居られるし。だいいち、動物子供から好かれる人に悪い人は居ませんよ。」
「そ、そんな風に言われると嬉しいけど・・・」
「明日は料理の打ち合わせだけですよね?」
「あ、うん。それもシェフに殆どお任せになると思うから、さほど時間も掛かんないと思うよ。」
「大野さんて、てっきり絵の仕事をされてるのかと思ってました。」
「ああ・・・絵は何て言うか趣味の一つだよ。」
「あなたの風景画、チラッとしか見てないけど素敵だった。」
「ホント?嬉しいなぁ。本当はね、画家を目指してたんだけどさ、画家じゃなかなか飯が食えないって
周りから凄く反対されたんだよね。でもそうやって言ってくれる人が居ると凄く嬉しい。」
「僕、広告代理店に居たから、イラストレーターさんとか結構知ってますけど
大野さんの絵は十分プロ並みだと思いますよ。」
「そうそう、ニノはどうして広告代理店辞めちゃったの?」
「えっ・・・あ、まぁ・・・色々有ったんで・・・」

何かマズい事聞いちゃった?
ニノがその話になったら、嫌な事でも思い出したみたいに若干表情を曇らせた。

「さてと・・・入力も片付いたんで僕はもう寝ます。」
「おっ、そうか。うん、お疲れ様でした。」
「それじゃ、お先におやすみなさい。」
「うん、おやすみ・・・」

前の会社でよっぽど思い出したくないような何かが有ったのかも知れない。
折角俺に心を許してくれてるのに、悪い事聞いちゃったな。
もう今後この話は俺の方からは決してするまいと思った。
ニノは窓側の方のベッドに横になると、頭までスッポリと布団を被ってそのまま眠ってしまった。
俺は枕が変わるとなかなか寝付けないので、部屋の灯りを落として眠くなるまで一人で暫く酒を飲み続けた。

 

 

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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