この指とまれ

この指とまれ 96

この指とまれ

第96話

 

 

「おいらの目を見てちゃんと答えて!」
「お、俺は・・・」
「ん?」
「だって、和幸まで・・・あいつに奪われたら・・・
俺は・・・俺は・・・」
「ニノ・・・何言ってんだよ。そんな訳ないじゃない。
どうしてそんな風に考えちゃうの?」
「あなたに俺の気持ちなんか分かんない!」
「んもぉ!ホント悪かったよ。」

ニノがこんなになるまで不安を抱え込んでたなんて・・・
しかもそれをずっと我慢して俺に言えずにいたなんて。
俺は堪らずにニノの細い身体をギューッと抱き締めた。

「智・・・」
「いいから、何にも言うな。全部おいらのせいだよ。
ニノ、おいら正直に話すよ。お願いだからこのまんま聞いてくれ。」

俺はニノを抱き締めたまま話を続けた。

「おいら、実は知念から英会話の個人レッスンを受けてたんだ。
最近休みになるたび出掛けてたのはそれが目的だった。」
「英会話・・・」
「うん。おいらさ、こっちで代表とかになっちゃったわりには
全く英語がが話せないじゃん。流石に日常会話くらいは
話せるようになりたくてさ・・・知念に相談したら
仕事中は無理だから休日とか就業時間後になら
レッスン付き合ってくれるって言うから。どうして知念?って
思うかも知れないけど、そこに深い意味なんて無いよ。
質問すれば直ぐに答えてくれる、丁度良い距離感に居るから
ただそれだけの理由なんだ。信じてくれ。」
「そ、そうだったんだ。」
「隠すつもりはなかったんだ。でもさ、ニノに
余計な心配掛けたくなかったんだよ。
だけどまさかそのせいでニノの事をかえって不安にさせてたなんて
おいら思いもしなかったから・・・」
「知念君は・・・悪いヤツじゃないよ。」
「えっ?」
「俺に無いものを全部持ってる・・・」
「ニノ?勘違いしないで。おいらは何が有ってもニノだけだよ?
ニノが嫌ならもう英会話のレッスンは辞める。約束する。」
「何も辞める事ないよ・・・」
「ニノ・・・」
「あなたがどんなに俺の事だけって言ってくれても
これだけはどうしようもないの・・・正直俺は前の失敗を何時までも
引き摺ってるんだ。女々しいよね。」
「それはしょうがないよ。それが分かってるのに不安にさせたおいらが悪いんだ。」
「こんなんだから相手に愛想尽かされるのかもね・・・」
「何言ってるんだよ。おいらニノに愛想尽かした覚えないぞ。」
「もう・・・前みたいな失敗を繰り返したくないんだ。
あなたのことは何が有っても失いたくないから・・・」

俺、こんなに愛されてるんだって思ったら
胸がギューッと締め付けられた。
こんなに愛してる人を不安にさせる自分に腹が立った。

「ニノ、翔ちゃん達も心配してるから帰ろう?」
「うん・・・」
「はぁ、もう好き過ぎる!ニノがこの世で一番好き!」
「智・・・」

ちょっと泣きそうな表情になったニノの頬を包み込んで
顔を傾けながら優しくキスをした。
それから指を絡ませて手を繋ぐと、二人でゆっくり別荘に向かって歩き出した。

「折角さっき誓いを交わしたのになぁ。」
「ゴメンね・・・俺のせいで台無しだね。」
「ニノは悪くないよ。」
「あのさ・・・さっきも言ったけど、英会話続けて良いよ。」
「えっ?」
「俺、あなたを信じてるから。」
「ニノ・・・」
「さっきは頭に血が昇って酷い事言ってごめんなさい。」
「ええっ?」
「あなたに父親なんか無理だなんて・・・」
「あーあ、ちょっとショックだったかも。」
「本心じゃないんだ。ホント、ゴメン・・・」
「英会話はもう辞めるよ。秘書も翔ちゃんに頼んで他の人を探して貰う。」
「えっ?そ、そこまでしなくても・・・」
「知念は秘書としては優秀だけど、やっぱおいらは
ニノの事を最優先で考える。」
「何も秘書を替えなくてもいいですよ。代わりに来た人にも
俺きっとヤキモチ妬きますよ。」
「えええっ?そうなの?」
「知念君だって、今更日本に帰されても可哀想ですよ。
俺、何度も言うけどあなたのこと本当に信じてるから・・・」
「ニノ・・・」
「明日はキチンと彼には御礼を言わないとね。
和幸の面倒みてくれたんだから。」

正直もっと喧嘩になると思ってた。
だけど正直に気持ちを伝えたら分かり合えるんだ。
だって、こんなにお互いの事が好きなんだもの。
俺はこの時思った。
もうどんな事情があったにせよ、隠し事だけはしまいって。
ニノは俺の事を失いたくないとまで言ってくれたけど
それは俺も同じだから・・・
今回のこの件をきっかけにして俺も目が覚めたところもあって
もう、これまでの独身生活の時の思考じゃ駄目なんだなって
つくづく気付かされた気がした。
夫婦はお互いの事を思いやり、尊重し合わなければ
簡単にその関係は崩れてしまう・・・
一度傷付いたニノは特にそうなんだ。

結局、その場は丸く収まったけど
それから俺は知念と個人的な付き合いは極力避けるようにして
英会話レッスンも有料の日本人講師に替えた。

 

つづく

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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