暗闇の天使達
第7話
「それで?大野君は社長に直談判してうまく話を聞いて貰えたの?」
「それがさ・・・うちの会社は倉田さんも知ってると思うけど、会社所属のグループとか個人が
熱愛だとか脱退だとか結婚だとか、もう次々に色んな問題抱えてた時期だから。」
「なるほど・・・言い出すタイミングを逃しちゃったってわけか・・・」
「そうなんだよね。そうしてるうちにニノは痺れを切らしちゃって
再びリーダーの自宅に通い始めちゃったんだよね。そしてそのうちまた某週刊誌の記者に
スクープされ掛けちゃって、そりゃもう叱られるってくらいじゃ済まなくなったの。」
「強引に別れさせられたとか?」
「会社としてはそのスクープを揉み消す為に、次はニノの熱愛報道を偽装工作しなきゃなんなくなって・・・」
「あー、それがあの結婚相手?」
「うん・・・」
「でもあのお相手の女性・・・凄かったよねぇ。本当に付き合ってた訳じゃ無いのに
あそこまで世間に叩かれてお気の毒としか言いようがないんだけど?」
「うん、でもね・・・あのお相手の人選も適当に選んだって訳じゃ無いんだよ。」
「へえ・・・どういうこと?」
「先ずね、リーダーとニノが付き合ってる事は絶対に世間に知られちゃいけなかったから
偽造を疑われちゃ意味が無いわけ。だから、この偽装に例えどんな反感をかっても
疑われたり、実は嘘ですって本人からバラされたりするのはNGだったんだ。
実は彼女はね・・・オリンピックのイベントに大きな力持ってる、ある政治家さんの愛人だったんだ。」
「ええっ?な、何それ?」
「倉田さん、ちょっと声、トーン落としてよ。」
「あ・・・すまない。」
「もうさ、ホントこの話とっくに時効だけど、今でも五十嵐好きだった人は大勢居るんだ。
年月が経ったからって、真実聞いてショック受ける人も少なからず居ると思うの。
ここが一番デリケートな部分だから、大きな声じゃ言えないんだよ。」
「し、しかし衝撃だな。ど、どういう経緯でニノと結婚にまで話が流れたの?」
「二人が交際を育んで結婚にまで至るというシナリオは、会社にとってもお相手にとっても
お互いに有益な関係が得られると結論付けて、リーダーやニノ本人達の意思を無視して
話がどんどん進められていったんだ。」
「いや、待ってよ。幾らなんでもそりゃないだろ?」
「うん。俺達もその事実を知らされた時は流石に引いたよ。だけどニノは自制が効かずに
リーダーに逢いに行ってスクープされてしまった訳だから、当然会社に迷惑掛けて
もう反抗することも出来なくなっちゃったから・・・」
「いやぁ・・・だからって結婚って・・・」
「お相手の彼女もね、丁度その政治家との不倫をマスコミに嗅ぎ付けられてたらしくてね。
相当マークされてたみたいなんだよ。だからタイミングが丁度良かったんだね。
お互いがカモフラージュの役割を果たしてくれるわけだから。
こっちの熱愛報道の方がインパクト有り過ぎて、実際に世間はこの偽装の記事に大注目したわけで
二人の影に隠れた実の交際相手なんて噂にもならないくらい衝撃を与えたもの。」
「そうだよね・・・あの頃本当に五十嵐は何をやっても話題になってたからな。」
「勿論、本当だと信じないファンも居たから、話題を逸らす為に俺らも次々に噂程度の熱愛報道は
援護射撃的に使われたりしたけど、それらはあんまりそういう意味では役に立たなかったんだよね。」
「それじゃ結局大野くんと二宮くんは強制的に別れさせられたの?」
「そうじゃないけど、あの頃本当に馬鹿みたいに忙しくて休みもろくに貰えなかったというのも有るから
昔みたいに頻繁に合瀬繰り返すなんてことも出来なくなってたんだよ。」
「ってことは、自然消滅?」
「うん、まぁ俺が聞いた話だとさ、2017年以降は二人の間である約束が交わされてたみたい。」
「約束・・・?」
つづく