
第4章
急展開②
「それじゃ、お夕飯の準備をするわね。」
ニノのお母さんが急にうちに泊まると言い出した。これは完全に予想外の展開だった。俺とニノはお互いの顔を見て目くばせしてどうしようと無言で合図する。
「ちょっ、ちょっとおーのさん、いい?」
ニノが俺の手を引っ張って俺の部屋に導いた。
「どうするつもりよ?」
「どうするって・・・」
「何で勝手に泊ってとか言っちゃうの?」
「だ、だって追い帰せないだろう?」
「当然、泊めるとなると母さんには俺の部屋を使わせるしかないけど。」
「う、うん。そうなるよね。何か問題でも?」
「まさか、いい年して俺を母さんと一緒に寝かすつもりかよ?」
「え?べつに親子だから何も問題ないだろ。」
「ほ、本気で言ってるの?」
「駄目なのか?」
「駄目に決まってるでしょ。母さん、ここに何しに来たか分かってるの?」
「ニノに会いに来たんじゃないの?」
「はあ?そもそも、母さんがここに来ると言った発端はあなたに有るんだからね。箱根で俺とあなたが付き合ってるかどうか証拠を見せろって言われたこと忘れたの?」
「忘れてはいないけど・・・」
「付き合って同棲してるカップルがどうして別々の部屋で寝るんだって話でしょ。」
「あ・・・そうか。」
「あ、そうかじゃないよ!まったく。」
「じゃあ、ニノはおいらの部屋で寝ればいい。」
「も、もう、そうするしかないですよね。今更やっぱ泊めないとか言えないから。」
「なんか、色々と面倒だな・・・いっその事、俺達本当に付き合っちゃうか?」
「えっ・・・」
「だってさ、奈緒ちゃんの事もそうだったけど、もっと簡単に諦めてくれるって思ってたのは事実なんだよね。おばさんにしても、何か嘘付いて騙すのは申し訳ないっていうかさ。」
「おーのさん?」
「何だ?」
「おーのさんって最低だね!そんな人だとは思わなかった。」
「え・・・」
ニノはプ~ッと頬っぺた膨らませて俺の事を睨んでる。
「ま、待ってよ。おいら何か気に障る事言ったか?」
「気に障るレベル超えてますよ!何なの?」
「えええっ?ま、ま、待ってくれよ。」
「あなたは付き合う相手をそういう理由で簡単に決めるんだ?」
「えっ?」
「事がスムースに片付かないから、面倒臭くなったから俺と付き合うんだ?」
「あっ・・・いや・・・それはその、それは言い方が間違ったというか。」
「何処をどう間違えればそんな酷いこと言えるんですか!!もう、最低最悪だよ。」
「いや、ホントごめん!!」
ちょっと言葉のチョイスを間違えただけなのに、何もそこまで怒んなくても・・・だけど、よくよく考えたら、俺は本当に最低な事を言ってしまった。
面倒だから付き合う、なんて間違っても言っちゃいけなかった。
ニノのことが好きだって告白が先だったのに、俺としたことが・・・
今この時点で告白しても、何の効力も生み出さないんだろうな。とんだ大失態だった。
「カズーッ?ちょっとこっちに来て手伝ってー。」
「あっ、はーい。いま行く!」
「あ、待ってニノ。」
「母さんが呼んでるんで、言い訳は後で伺います。」
こっ、怖っ・・・そりゃあ頭に来てるだろうけど、こんな調子で今夜ここで俺達は一緒に寝れるのか?
ニノが部屋を出てった後に、俺もリビングに戻ると、さっきの怖い表情とは打って変わり、おばさんにニコニコ笑顔で話してるニノを見て、それが俺からすれば余計に恐ろしく思えた。
つづく