
第4章
急展開⑥
それはかなりヤバイ状況ともいえる。
何故ならニノをすっぽりと胸の中に抱き締めていたら、完全にもう一人の俺がスタンバイを始めて、身体の中心がムズムズとしてきやがった。
こんなに密着していたら当然か・・・俺は悩んだ。ここから先は一体どうすればいいんだ?
自分で解決できないから、一度ニノから体を離してその彼の様子を伺うと、ニノは全てをお見通しなのかニヤリと一瞬笑って見せ、俺の唇を目掛けてダイブしてきた。
「うっ・・・んんんっ・・・」
そういうことをするのは、あの旅館以来だけど、今は完全に状況が違ってる。何が違うって、間違いなく今はお互いの想いが通じてる。
それじゃ、遠慮は要らないということか・・・だけど、次の瞬間ニノの唇があっけなく離れた。
「に、ニノ?」
「やっぱ、やーめたぁ。」
「へっ?」
な、なんでだよ?俺はもう完全に臨戦態勢だったってのに。
「ニノ・・・」
俺はしつこくニノにキスの続きを迫る。だけど、全力で身体を押し返された。
「な、なんで?」
「だって、あなた面倒くさいから俺と付き合うって言ってませんでしたっけ?」
「あ・・・」
思い出した。さっきの事をまだ根に持ってるんだ。
「だから、さっきのは謝ったじゃん。」
「うん。でもあれ、あなたの本音でしょ?」
「ち、違うよ。」
「でも恋愛すること自体面倒だって人も居ますからね。」
「考えてもみてよ。いくら面倒だから言っても、好きでもないヤツと本当に付き合ったりしようと思うか?」
「え?今なんて言った?」
「好きでもないヤツと・・・」
「えっ?」
「あっ」
そ、そうか。そういうことか。ニノは俺からちゃんと好きだって言葉を告げられてないから、それを直接言わせたいんだ。
「んふふふ・・・」
「な、何だよ?」
「ニノってやっぱ可愛い。」
俺は再びニノの身体を力一杯抱き締めた。温かくて柔らかくて、愛おしさが溢れて胸がキュンとなる。
「な、何だよ。やめたって言ったでしょ。」
「やだ!やめない。」
「駄目!許さない。」
「許してよ。」
「やだっ。」
布団の中で何やってんだってくらいイチャイチャを繰り返して、最後の最後は俺が真剣な表情でニノを見つめ、
「おいら、ニノのことが本気で大好きなんだ。俺とマジで付き合ってくれるよね?」
「さ、智・・・」
ニノは薄茶色の大きな瞳をうるうるに潤ませて、俺に大きく頷いて見せた。
それから俺達は夢中でキスをした。何度も何度も角度を変えて、どちらからでもなく唇を割って忍ばせて絡みあった。
全身が痺れて身体が熱を帯びて甘い疼きを覚えると、俺は焦るように着てたトレーナーを脱ぎ捨て、ニノの上着の裾に右手を忍び込ませようとしたら
「あっ、今夜は我慢して・・・」
って、お預けを食らってしまった。
「な、なんで?」
「母さんが隣の部屋に寝てるのに、それはいくら何でもマズいよ。」
「えええっ?だ、大丈夫だよ。大きな声出さなきゃ・・・」
「ダメだって。俺が無理だってば。」
「うううっ・・・マジかぁ。」
「今夜だけ我慢して。」
なんという蛇の生殺し状態だ。こんなに色っぽいニノを横に置いておきながら何も出来ないなんて。
俺は収まりの付かない自分の身体を必死で制御して、うつ伏せになって腐ってたら
「ウフフフ・・・」
ってニノの笑い声が聞こえて、そっと俺の手を握ってきたから俺もその手を握り返すと、いつの間にか俺達は仲良く手を繋いだまま眠りに落ちていた。
つづく