
第4章
急展開⑨
「チビっていうのか?デカいチビくんだなぁ。どうぞ、とにかく一緒でも何でも構わないから上がって。」
「それじゃ、ちょっとだけお邪魔しまーす。あ、これは頂き物なんだけど、良かったら食べて下さい。」
「わ、ここのケーキ並ばないと買えないんだよね。いいの?」
「頂き物なんだけど、僕一人でそんなに食べれないし。よかったらどうぞ。」
「奈緒ちゃーん、ケーキを頂いたよ。一緒に食べようよ。」
「ええっ?私も良いんですか?」
「宜しければどうぞ。」
「あの、相葉先生ですよね?小説家の・・・」
「えっ、あ、そんな感じですけど。」
「私、先生の小説何冊か持ってます。もう、どのジャンルも大好きなんです。」
「あははっ、ありがとうございます。なんか照れくさいな。」
「奈緒ちゃんも座りなよ。」
「あ、申し遅れました。私は大野先生のアシスタントの奈緒です。」
「すみませんね。お仕事中に勝手にお邪魔したりして。」
「きゃぁ、可愛い!この子、相葉先生のワンちゃんですか?」
「うん。チビっていうの。宜しくね。」
「相葉君は何時もチビちゃんと行動は一緒なの?」
「いや、今日は予防接種に来たんですよ。たまたま掛かり付けの獣医がこの近所なんで。」
「そっかぁ。」
「ところで、大野さんって独身でしたよね?」
「えっ?う、うん。そうだけど。」
「いや、ほら左手の薬指に・・・」
「あっ、ああ、これか。」
「いやだっ!気付かなかった。先生何時からそれを?」
「最近買ったんだよ。ニノとペアで。」
「彼女さん、居るんですね?」
「彼女ならイイですけどね。」
「奈緒ちゃん。」
「だって、そうじゃないですか。男性と恋愛して指輪までお揃いで買ったりして。気持わるっ。」
「お、大野さん、男性とお付き合いしてるんですか?」
「あっ、その・・・なんていうか、つまり、そうなんだよね。」
「えええっ?そうだったんだ。」
相葉君は目を丸くして驚いてた。
「今度ゆっくりお話し聞かせてくださいよ。」
「ええっ?お話って・・・」
「僕、同性愛ものの恋愛小説も書いてるってお話しましたよね。」
「あ、いや、そんな・・・お話出来る様な事は何も。」
「そうだ。今度もし良かったら、うちの庭でバーベキューしませんか?松本君も呼んで。それから大野さんのお相手も是非。」
「うわぁ。楽しそう。いいなぁ・・・」
「良かったら奈緒さんもどうですか?」
「あ、あたしはご遠慮しときます。だって、二宮さんも呼ばれるんでしょ?私、先生のプライベートに首は突っ込まないと約束したところだし。」
「いいじゃん。相葉君が誘ってくれてるんだから、来れば?」
「結構です。先生が良いと言われても、二宮さんがきっと嫌がりますよ。」
「ご、ゴメンね、相葉君。内輪の分かんない話しちゃって。」
「い、いえ。なんか複雑みたいですね・・・何も知らなくて。こっちこそすみません。」
「でも、バーベキューは是非お邪魔させて貰うよ。連れにも話しときます。」
「ええ。是非僕も一度どんな方かお会いしてみたいんで。」
それから1時間くらい、仕事の話とかしてて、途中で仕事の電話が入ったみたいで、相葉君は慌てて自宅へ戻ってしまった。
そして、夕方6時過ぎに奈緒ちゃんと入れ替わりでニノが箱根から戻って来た。
「ただいまぁ。」
「あ、ニノ、お帰り。」
「疲れちゃったよぉ。往復で半日も運転だもの。」
「泊ればよかったのに。」
「ええ?嫌だよ。」
「とにかくおいらが夕飯の準備すっから、ニノは先に風呂にでも入りなよ。」
「あ、夕飯は母さんがまた何かくれたよ。今夜はこれ食べろって。」
ニノが風呂敷包みの重箱抱えて俺にハイって手渡した。
「マジか。おばさん、こんなに気を使わなくてもいいのにな。」
「あなたまで二宮家の後継話に巻き込もうとしてるんだから、信じられないよ。」
「あ・・・その話か。あれって本気で言ってたのかな?」
「本気に決まってるでしょ。」
「そっかぁ・・・本気なのか。」
「そっかぁ、じゃないでしょ?まぁ、あんなのスルーでいいからね。」
「そうもいかないだろ?」
「え?まさか真に受けてるの?」
「そ、そりゃあ今直ぐというわけにはいかないけど、ニノと一緒になるんだったら、そのくらいの覚悟はおいらにも有るよ。」
ニノは今の俺の発言が意外だったのか、一瞬だけどとても困惑した表情を見せた。