
第4章
急展開⑫
床の上に崩れ落ちた後、俺はニノの身体をゆっくりと後ろに倒すと顔の真横に両腕を立てて上から彼を見下ろした。
「やっぱりやせ我慢でしたね。」
あなたの事は最初からお見通しなんだよって言わんばかりの勝ち誇ったように口角を吊り上げてニヤリと笑う。
だって、今夜はもう誰も2人を邪魔する者は居ない。だったら、もう目の前にいるニノさえその気になってくれれば俺は何時だってスタンバイ出来てる。
「おいら、ニノの全部が知りたいの。嫌か?」
「嫌とかじゃないですけど・・・」
「嫌いにならないか?」
「それもないですけど・・・ここで?体が痛いし、冷えますよね?」
「えっ、あっ・・・確かに。」
ニノは床に仰向けに倒されてるから、違和感でしかなかったかも。確かに直接床の上ってどうかと思うのは無理もない。
俺はニノの体をひょいっと抱き上げた。
「えっ?何すんの?」
ニノが怖がって俺の首にしがみつく。
「ここは駄目だ。場所変える。」
俺はニノをお姫様抱っこしたまま寝室へと移動した。寝室は、今朝起きたまんまの状態になっていて、ベッドメイクも何もしていない。
そんなベッドの上にニノをそっと下ろすと、俺は部屋の電気を消して、カーテン閉めて上着を脱いで上半身裸になった。アクリル素材のセーターが摩擦でパチパチ静電気を起こして髪の毛がもわっと逆立ってしまった。そんな俺を見て、ニノがケラケラ声を出して大笑いする。
「ハハハハッ、まるでスーパーサイヤ人だな。」
「へへっ。これからもっとスーパーサイヤ人以上になってやるから覚悟しとけよ。」
「下ネタかよ。」
ちょっとムードがねえなぁ・・・だけど、これって本当は照れ隠しなんだよな。お互いに緊張してること見せたくないっていうか。
初めて俺達、そういう事しようって場面なんだから、固くならないように自分なりに必死なんだと思う。
それから俺はズボンも脱いでパンツ一丁になって、いよいよベッドの上に出陣する。
ベッドの中央に膝まげて女の子みたくぺったんこ座りしてるニノの目の前にすり寄って、そっと顔を傾けながら近づくとどちらからでもなく唇が重なった。
ニノとチューするのはこれがまだたったの3度目。だけど、それはふんわりと弾力があって、ずっと唇が触れていたいと思えるほど気持ち良かったりする。
ニノはキスが上手い。ニノとキスしてるだけで昇天にも昇りつめてしまいそうなほど、甘くて蕩けそうな感覚。慣れてるのか?
そこは彼の恋愛履歴とか知らないから、俺の勝手な想像でしかないけど・・・
今日はこれから、まだその先の段階へ・・・俺達が経験したことのない、未知の世界が待っている。
だから、焦ってしまいそうな気持を抑えて、ゆっくりとじっくりと高価なワインでも味わうかのように長いキスを繰り返す。
あまりの緊張からか、ニノが酸欠状態に陥りそうなくらい息苦しそうになってるから、ちょっと唇を開放して様子を伺う。
「だ、大丈夫か?」
「ハァッハァッ・・・激しすぎだよっ・・・」
「そんじゃ、少し休憩すっか?」
「冗談でしょ。」
「えっ?うわっ・・・」
俺はニノに両肩掴まれてベッドの上に荒々しく押し倒された。
つづく