鍵のかかった部屋 大宮編

鍵のかかった部屋 大宮編 7

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鍵のかかった部屋 大宮編

第7話

 

 

その日仕事を終えた俺はスーパーで酒とつまみになりそうなものを幾つか買って
榎本さんの部屋に戻った。
インターホンを鳴らすと、直ぐにドアを開けてくれたんだけど
どうやら来客が来てたらしくて、しかもその人は若い女性だった。
彼女は俺と入れ替わりで帰ろうとしているところだった。

「こんばんは。」
「ど、どうも。」
「この人が二宮さん・・・」
「あ、二宮です。」
「お噂は伺ってます。」

お噂?どんな噂だよ。

「それじゃ榎本さん、私はこれで失礼します。
さっきの依頼の件、宜しくお願いしますね。」
「分かりました。」
「それじゃあ、二宮さん、また・・・」
「あ、はい。」

社交辞令的な挨拶だけして彼女はさっさと帰って行った。

「なーんだ。榎本さん、ちゃんと彼女居るんじゃん?」
「は?」
「なかなか可愛い子じゃない。今の・・・」
「彼女は同じ事務所で働いてる弁護士です。」
「へえ・・・彼女が弁護士・・・」
「いえ、僕たちはそういう関係では有りません。」
「それじゃあどういう関係?」
「だから、仕事仲間だって言ってるでしょう。」
「そうムキになるところが益々怪しいなぁ。」
「べつにムキになんかなっていませんよ。」
「そうだ、そんなことより榎本さん飯食った?」
「いえ・・・これからですが。」
「一緒に飲まない?つまみも適当に買ってきたんだ。」

俺はぶら下げてた買い物袋を持ち上げて見せた。

「お幾らですか?」
「いいよ。泊めて貰うんだもの。このくらい奢りますよ。」
「安月給のあなたに奢って貰う訳にはいきませんよ。」
「まぁ、それとこれとは別だよ。」

本当にそう思うのならば鍵代負けてくれたっていいのに。
喉まで出かかったけど、今この人を怒らせたりしたら
また野宿とかになりそうだから、グッと堪えた。
気を取り直して買ってきたビールとつまみを
テーブルの上に並べると、榎本さんが食器棚から
取り皿やグラスを取ってきてくれた。
俺はビールをグラスに注いで乾杯を誘ったけど
榎本さんはそれをわざとなのか?完全にスルーして

「頂きます。」

と言って一人で勝手にビールを飲み始めた。

「これ・・・良かったらどうぞ召し上がって下さい。」
「わっ、何これ?めっちゃ美味そう。」
「それ、さっき彼女が持って来たんです。テイクアウトの中でも
かなり人気の店のやつだそうで・・・」
「へえ。あっ、ねえねえ、彼女に俺の事話したの?」
「あー・・・はい。」
「何で?」
「え?」
「やっぱり付き合ってんでしょ?俺が泊まりに来ることを
わざわざ説明するってことは・・・」
「さっき、あなたがこれから帰ると電話を掛けて来られた時に
たまたま彼女がうちにやって来たんです。
彼女もあなたみたいに電話の相手が誰かとしつこいので・・・」
「ええっ?それって、彼女はあなたの事気になってるって証拠だよね?」
「そんなんじゃないですよ。」
「照れなくていいじゃん。いいなぁ。榎本さんモテモテじゃん。」
「二宮さんこそ、女性には困ってはいないでしょう。」
「え?なんで?」
「引っ越して来られてから何度か違う女性が出入りしてるの
見ましたけど。」
「み、見間違いじゃないの?」
「いいえ。間違いないです。現に一昨日の晩もそうでした。
あなたは酔って帰って来ましたが、女性が一緒でしたよね?」
「え・・・見てたの?」
「たまたまです。」

たまたま?だってこの人が現れたのは彼女が帰ってからだ。

「二宮さん、女性ほど怖い生き物は有りませんよ。
これは僕の勝手な想像ですが、もしかすると、あなたが知らないだけで
あなたは女性から恨みを買ってる可能性が有るかもしれない。」
「恨み?俺は恨まれるような事は何もしてないけど。」
「相手に優しくすれば一度に複数の彼女とお付き合いしても良いという事には
ならないです。女性は嫉妬すると恐ろしいですよ?」
「えええっ?何それ・・・」
「案外、鍵をすり替えたのはその女性の誰か・・・かも知れません。」
「ええええっ!」
「心当たりありませんか?」
「な、無いよ。」
「そうですか・・・それなら僕の考えすぎかもしれないですね。」

まぁ、確かに俺には特定の彼女っていない。
そもそも付き合うのって面倒臭いって思ってるタイプの人間だから。
俺も一応男だから、飲みに行ったりして俺に目がハートになってる
女の子に声掛けてお持ち帰りした事は何度か有る。
でもまさか、そんな場面を榎本さんに見られてたとは驚きだった。

「も、もう、やだなぁ。榎本さんも人が悪いよ。
俺の事を前から見掛けてたんなら、ひと声掛けてくれてもいいのに。」
「お邪魔しても悪いと思って。」
「とかなんとか言っちゃって、本当は俺の事が気になってたんでしょう?」

そうふざけた口調で言ってみただけなのに
榎本さんはそれから完全に無口になり、
ひたすら目の前のビールをゴクゴクと飲み続けた。

 

つづく

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蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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