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鍵のかかった部屋 大宮編

第4話

 

 

「き、気を付けるって何を?」
「これはあくまでも僕の勘ですが、二宮さんの部屋の鍵は
誰かが故意にすり替えて所持してる可能性が有るわけです。
つまり、何故そのような事をわざわざするのかと言えば
ここに侵入する為だとしか考えられません。
ようするに、近いうちに不法侵入されるかも知れない・・・
ということです。それは、早い段階だと思われます。
何故なら、二宮さんが新しい鍵を依頼し、手元に届いてからでは
遅いからです。」
「ええっ?ど、どうすればいいの?」
「まぁ、明日は二宮さんはここには帰られないと仰ってましたので
不在の場合は空き巣で狙われ、仮に今夜狙われるとしたら
強盗、という事になるかもしれないですね。」
「ご、強盗?」
「はい、ですからくれぐれも気を付けて、とお伝えしに来たんです。」

むちゃくちゃ恐怖を煽られてる気もするけど
実は俺もさっきその事を考えてたから、完全に笑い飛ばして
否定する事が出来なかった。

「ど、どうすればいいの?」
「セキュリティーシステムの会社に依頼して
安全防犯システムを設置すればイイ事なんですが・・・
もう今から依頼しても設置は明日以降になるかと。」
「こ、怖いよ。俺今夜そんな事聞いたら眠れないじゃん。」
「だから、気を付けてと・・・」
「ふざけてんの?」
「ふざけてなんていません。」
「だって鍵をかけて寝てても相手はここの鍵を持ってるんだよね?
勝手に入って来れるよね?」
「そういうことになりますね。」
「どうすりゃいいんだよ?」
「とりあえず防犯カメラをお貸ししますよ。」
「え?」
「もしもの事が有れば映像に犯人の姿を残せるでしょう。
ちょっと待ってて下さい。今からカメラ持ってきますから。」
「え?あ、ちょっ・・・」

榎本さんはそう言って一旦自分の部屋に戻って行った。
どうも、あの人信用出来ない。
開錠代を1回3千円とか、新しい鍵の手配にしても
あまりにも段取りが良過ぎやしないか?
そしてこの話にしても、下手すりゃセキュリティー会社に
防犯システムを契約させようとしてる?
まぁそれは無理に勧めなかったにしても
次は防犯カメラ?幾らで売りつけるつもりなんだろう?
そう考えたら、鍵をすり替えたのって案外あの人なんじゃないか?
とまで思えてきた。

「お待たせしました。仮に犯人が侵入するとしても
鍵を持ってるわけですから、この玄関から堂々と入って来るものと
思われます。この辺りに設置しておきましょう。」

榎本さんは脚立と防犯用カメラらしきものを自宅から持ち込み
天井から玄関の扉部分が映るように手際よくカメラを設置した。

「終わりました。このカメラに内蔵されたHDDは最長72時間連続で
撮影可能なんで、3日置きにリセットする必要が有ります。」
「いいよ。今夜だけで・・・」
「ですが、万が一不在の時に狙われたら・・・」
「だって俺は自分で鍵は開けれないもん。」
「・・・確かにそうですが。」
「で?それ幾らよ?」
「え?」
「リースと設置代・・・」
「いえ・・・こちらは無料でお貸ししますよ。」
「えっ?何で?」
「これは僕の私物ですし、勝手に僕が設置したんですから。」
「いいの?」
「ええ。」

流石にこれまで料金請求されたら榎本さんは黒だなって思ったけど
ちょっと考え過ぎだったかな?
でも・・・まだ完全に彼の疑いが晴れたというわけではないけど。

「それでは、くれぐれも気を付けてお休みください。」
「あ、ああ・・・うん、そうする。ありがと。」
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」

普通にあの人の言う事を鵜呑みにすればこんな怖い話は無い。
だけど俺の部屋に強盗に入ったところで、大して高価な物は
何一つありゃしない。
狙うならもっと金持ち狙うだろう。
そう考えれば、やっぱり疑わしいのはあの人だ。
偽善者を装って何かにつけて俺から金を稼ごうとしてるのかも知れない。
だとしたら、恐怖心煽ってるだけで強盗なんてきっと現れない。
あのカメラだって本当は幾らか決めてたのかも。
俺が先手売って値段聞いたから、疑われたらマズいと思って
急遽タダにしたのかも・・・
きっとそうだよ。
そう考えると、さっきまであんなに怖かったのにもう何とも無くなった。
それから普通にシャワーを浴びて寝室のベッドに横になろうかとした
その時だった。
ガチャガチャと玄関の方から誰かが鍵を開けようとする音が聞こえて
俺はベッドから飛び起きた。
な、何?こんな時間に、榎本・・・さん?
部屋に置いてた金属バットを握り締めると
俺は恐る恐る玄関の方へ足を進めた。

 

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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