最終章
ラブソングは君と②side kazunari
母さんが倒れてから1週間後、母さんは病院からなんとか退院出来たけど、暫くは自宅療養するようにと医者から告げられた。
俺は、松本さんに連絡してモデルの仕事を辞めたいと相談した。
俺の仕事は軌道に乗ってきてるところだったから、当然直ぐに了解とはいかず、とりあえずは保留という形で当面はお休みをするということになった。
だけど、俺はもう東京へ戻るつもりは一切ない。遅かれ早かれ、こうなる事は逃れられないと思ってたし、どうせ辞めるのなら早い方が他に迷惑が掛からなくて済む。
おーのさんは、俺の事を心配して毎日メールをくれるけど、俺は昨日からそれに返事をしていない。忙しいからだと思ってるだろうな。
「カズ・・・ゴメンね。せっかく大野さんと来てくれてたのに。母さん、明日から仕事に戻るからあんたは東京に戻っていいわよ。」
「何言ってんの?暫く自宅で療養するように言われたの忘れちゃったの?母さんが倒れたのは過労とストレスが原因なんだよ。これ以上無理したら、今度こそ洒落になんないよ。」
「早く大野さんと一緒になって、二人でここ継いでくれたら助かるんだけどな・・・」
「母さん、その事なんだけど、俺はあの人と一緒になる気はないからね。」
「ええっ?なんでよ?」
「心配しなくても、俺はこのままここに残って旅館の仕事を手伝うよ。」
「で、でも・・・」
「母さん、おーのさんはね、母さんには分からないだろうけど、こんな旅館の仕事をするような人じゃないんだよ。世間でも認められた凄いイラストレーターなの。だから、俺があの人の才能の芽を摘むなんて許されないんだよ。もうおーのさんのことは忘れて。俺も忘れるから・・・」
「カズ・・・本当にそれでいいの?」
「俺がいいって言ってるんだから、余計な心配しないでよ。」
「あたしのせいね・・・」
「違うってば。母さんには関係ないよ。これは俺とおーのさんの問題だから。」
母さんに言ったことは俺の本心だった。あの人には個展が終わるまでって言っちゃったけど、実際個展が成功すれば今よりもっと仕事の依頼も増えるだろうし、その後直ぐに辞めてここに来て俺と旅館の仕事するなんて事は絶対に有り得ないんだ。ううん、そうじゃなくてそんなことさせちゃ駄目なんだ。
それから俺は一心不乱に働いた。慣れるまでは母さんから色々と教わりながらフロントに入って旅館の仕事を一から覚えた。それから数日後に、医者からの許しが出て母さんが仕事に復帰できるまでになった。とはいえ、無理はさせられないから母さんには本館の仕事だけを任せて、別館は俺が全て賄う事にした。
そんなある日の事、俺と連絡が取れなくなったおーのさんが、痺れを切らして箱根に会いに来るとメールで言い出した。
「母さん、ちょっと頼みがあるんだけど・・・」
「頼み?」
「明日おーのさんがこっちに来るらしいの。」
「あら、良かったじゃない。」
「良くないよ!あのさ母さん、ちょっと協力して欲しいんだけど・・・」
おーのさんに会ったら、きっと俺もまだ気持ちが揺れ動くかもしんないから、出来れば今は会わずにいたい。
本当はこんな小細工はしたくないけど、あの人に俺の事を諦めさせる方法が他に浮かばなくて、俺は母さんに一芝居うって貰うように協力を要請した。
つづく
こんばんは
うーん、カズの気持ちもわからないではないけど、お母さんとおーのさんの気持ちもかんがえてほしいな!
カズもおーのさんも 、自分がこうと思ったら譲らないタイプなんでしょうね!
3240様、こんにちは。
いつもコメントありがとうございます(^^)
これから雲行きがどんどん怪しくなるんですが、実はお話のゴールは目の前なんです^^
さて・・・二人にどんな結末が待っているのでしょう?お楽しみにです<(_ _)>