
最終話
ラブソングは君と⑫
「大野さんも来てたんだ?」
「あっ、相葉くん・・・」
「ここ隣、良いですか?」
「おいら、もう帰るとこなんだけど・・・」
「まぁまぁ、一杯くらい付き合って下さいよ。」
「う、うん・・・」
「それじゃ、僕はビール、大野さんはロックですよね?」
「か、かしこまりました・・・」
マスターがちょっと下を俯いて、何か言いたそうに笑った。
「相葉くん、知ってた?」
「え?何を?」
「ニノがさ、今日グアムに行っちゃったことだよ。知ってたんでしょ?本当は・・・」
「あー、確かに聞いてはいましたけど、それが今日だったんだ?」
「何でそんな大事なこと教えてくんなかったの?」
「だから、グアムに行くことは聞いてたけど、それが何時なのか知らなかったんですよ。だから時間がないっていうことは言いましたよね?」
「そりゃそうだけどさ・・・酷いよ。おいらもマスターから夕べそれ聞いて、今日朝から一日空港で待ってたんだよ。でも、ニノとは会えなかった。」
「そ、そうなんだ・・・」
「そうなんだって、あんまりじゃん。」
相葉くんとカウンターに並んで話をしながら、また悔しくて涙が止まんなくなった。
「大野さん、今でも二宮くんのこと好き?」
「好きに決まってるじゃん!」
「もし、二宮くんに逢えたらこの先どうします?」
「え?だって・・・ニノはグアムだよ?」
「もしも、例えばの話ですよ。」
「そ、そりゃあ色々謝るだろ?それから、プロポーズもして何処にも行かせない!」
「それ、ホントですよね?」
「ほ、本当だよ。こんなこと冗談で言えるわけないだろ。」
「そっか・・・それ聞いて安心しました。じゃ、僕はこれで帰ります。」
「え?何?もう帰るの?」
「マスター、大野さんにもう一杯作ってやって下さいよ。」
「あ、はい・・・」
マスターがクスクスと笑いながら俺の空になったグラスを下げた。
「じゃね・・・大野さん、頑張って下さいよ。」
相葉くんが、俺の肩をポンポンッと叩いて席を立った。何だよ?変なの・・・今来たばっかなのに、あの人ここに何しに来たんだろう?
マスターが優しく微笑みながら俺にウィスキーロックの入ったグラスをそっと差し出した。
「・・・ありがとう。でも、もうこれ飲んだらおいらも帰るよ。」
すると、相葉くんは帰った筈なのに、俺の肩にふわっと誰かの手が・・・
「マスター、カシスオレンジ・・・」
「え?」
その声に驚いて真横に腰掛ける姿を確認すると、それは間違いなくニノだった。
つづく