
第6章
間違いだらけの選択②
それから3日が過ぎて、そろそろ流石にニノも相葉君の家には居辛くなっただろうと、俺は様子を覗うべく相葉君に電話を入れてみた。
「もしもし、相葉君?ニノはその後どんな感じ?」
「それが・・・」
「何?どうかしたの?」
「あ、いや・・・二宮くんの事はもう暫くうちで預かろうと思うんですけど。」
「えええっ?ど、どうして?」
「実は二宮くん本人から、家賃払うしチビの散歩も行くからもう少しだけ置いて欲しいって言われちゃったんですよ。」
「チビ?・・・ああ、あのワンちゃんか・・・」
「僕は大野さんの所に戻るように説得し続けてるんですけど・・・」
「いや、やっぱりおいらそっちに直接迎えに行くよ。」
「あ、大野さん、それはまだやめたほうがいいかと・・・」
「ええっ?何で?相葉君だって何時までもニノに居候されたんじゃ堪らないでしょ?」
「いえ、僕は本当に全然構わないんですよ。どれだけでもすきなだけ居てくれて。家賃とか頂くつもりも無いですし。」
「でも・・・やっぱり・・・」
「今やっと彼落ち着いてきて、モデルの仕事も始まったところですし、今は下手に彼の事刺激しない方がいいと思うんですよね。僕が大野さんに居場所を教えたと分かったら、二宮くんはまたここを出て行っちゃうかもしんないし。そうなったら、もう本当に彼のこと探すの厳しくなるんじゃないかなぁ?大野さんが二宮くんに早く会いたいって気持ちは分かりますけど、ここはもう少し我慢して、僕に任せて貰えませんか?」
「そ、そんなぁ・・・」
「大野さんも、そんなに二宮くんのことが好きなら何で追い出したりしたんですか。」
「うっ・・・それは。」
「とにかく僕に任せて下さい。二宮くんのことは僕が責任もって預かります。それから、大野さんとはどんな形にせよ近いうちに話し合いに応じるように僕からも説得してみますから。」
「ほ、本当に?」
「約束します。だから、僕から連絡するまでは直接家に来たりするのはやめてくださいね。」
「わ、分かったよ。」
「それじゃ、また何か有ったら僕も連絡するんで・・・」
「ああっ、相葉君?」
「えっ?あ、はい?」
「あっ、いや・・・何でもない。ニノの事、宜しく頼みます。」
「はい。心配いりませんよ。任せて下さい。」
「う、うん。」
俺が今、相葉君に何を言い掛けたかというと、ちょっとだけ心配になったんだ。相葉君は俺から見ても本当に優しくていい人だ。
だから、ニノが相葉君に好意を持ってそのまま相葉君の方が良くなったとか言わないか、急に心配になったんだ。
俺は今まで一度だって一人が寂しいから恋人が欲しいだとか、結婚したいとか思った事がないけど、ニノが目の前から居なくなって、まさかこんなに日常がつまらなくなるとは思ってもみなかった。
相葉君の言う通りだよ。何でこんなに好きならあの時俺は出て行けなんて言ったんだろう?
もう、本当に結婚が嫌ならしなくたっていい。ずっと傍に居てくれるだけでいい。もう一度ニノに会えたら、俺は真っ先にそれを伝えようと固く心に誓った。
つづく