真夜中の虹 10
大野さんと飲み明かした俺はいつの間にか眠ってしまってた。リビングで飲んでた筈なのに、気が付いたら寝室のベッドの上に服のまま横になっている。ヤバい・・・全然覚えてない。いくら居心地が良いにしても、寝落ちするまで飲むなんて・・・俺は慌ててベッドから飛び起きた。リビングの方から、大野さんが誰かと電話で喋ってる声が聞こえた。
「だから、俺が誰と付き合おうと関係無いでしょ。・・・は?ニノは友達だよ。どういうって・・・何でそこまでお前に説明する必要あんだよ?」
俺の話してる・・・?あ、潤って人からの電話だな?きっと突然現れた得体のしれない俺にヤキモチ妬いてるんだ。
「おまえはホントに心配性だな。おいらは子供じゃあるまいし・・・大丈夫だよ!おまえの気持ちは有難いけど、頼むからこれ以上おいらのプライベートを干渉するのやめてくれ。」
俺が原因で喧嘩?流石にそれはマズいな・・・俺はゆっくりリビングのドアを開けた。大野さんは俺に気付いて慌てて電話を切った。
「あ、ニノ、おはよう。」
「お、おはようございます。」
「ゴメンね。起こしちゃった?」
「ううん・・・」
「ゆっくり眠れた?」
「お陰様で・・・あの、俺、覚えてなくて・・・どうやってベッドまで辿り着いたんだろ?」
「あー、ここで寝ちゃったからおいらが運んだんだ。」
「ええっ?そうなの?」
「べろんべろんだったもんな。」
「ご、ごめんなさい。」
「謝ることないよ。飲ませたのおいらだから。」
「久し振りにあんなに飲んだから酔いが回っちゃって。」
「んふふ。色々話聞けて楽しかった。」
「う、うん・・・」
俺は何話したかもあんまり覚えてない。
「あ、あのぉ・・・電話の相手・・・」
「あっ、聞こえちゃった?昨日ここに来た潤だよ。幼馴染みの。覚えてる?」
「うん・・・覚えてます。」
「おいら、滅多に人を家の中に上げないんだ。だから変に心配してんだよ。ニノのこと何も知らないくせに。」
「多分ですけど・・・あの人大野さんに特別な感情とか抱いてるんじゃないですか?」
「えっ?」
「だって、それって俺に対してヤキモチ妬いてるってことでしょ?」
「は?やきもち・・・?」
大野さんはその後クスクスと笑い出した。
「ふはははっ・・・ニノにはそういう風に見えるんだ?」
「え?だ、だって・・・」
「そうかぁ、ニノは男の人が好きになったって言ってたもんね。」
あ・・・酔っ払ってそんな作り話したんだっけ?
「潤とおいらはそんな関係じゃないよ。」
「隠さなくてもいいですよ。俺もちゃんと昨日話したじゃない。」
「ほんっと、悪いけどそんなんじゃないんだ。昨日も話したけど潤はただの幼馴染み。」
「ふぅん・・・」
ということは、潤って人の一方的な片想いってことか・・・なるほどね。で、障害になってる人物がもう一人いるって事で合ってるよね?
「それじゃ、大野さんは今現在フリーなの?」
「あ、うん。そうだけど?どうして?」
「え?あ・・・いや、それなら俺また泊まりに来れるかなって。」
「全然大丈夫だよ。おいらが誰を家に泊めようとおいらの勝手だもん。マジでまたいつでも遊びに来てよ。」
「う、うん。」
大野さんが今現在フリーという事を確認出来ただけで俺にとっては収穫だ。ある意味任務終了。とりあえず、居心地は十分良かったけど、もうここに来ることも恐らくないだろうなって思いながら俺は自宅へ戻った。
そしてその翌日・・・俺はいつものように仕事に向かうと・・・
「ニノ、ちょっと。」
「あ、はい・・・」
突然相葉さんが神妙な顔で話し掛けてきた。
「おまえ、どうしちゃった?うちの規約を覚えてるよな?」
「え?何の話?」
「依頼が来ちゃったんだよ。」
「は?そりゃ来るでしょね。うちは探偵事務所なんだから。」
「馬鹿!そういう話じゃないよ。」
「あ、それより相葉さん、杏奈さんに大野さんはフリーだったから情報開示してあげて良いよ。」
「その件なんだけど・・・」
「え?何よ?」
「その案件なんだけど・・・」
「二宮!」
「あ、所長、おはようございます。」
「いいからちょっと来い。」
「は、はい・・・」
相葉さんの話の途中で俺は所長に呼ばれ、所長室へ向かった。
つづく