真夜中の虹 11
「失礼します。」
「うん・・・まぁそこに座れ。」
「あの・・・」
「結論から先に言うわ。二宮、おまえは今日から処分が決まるまで自宅待機だ。」
「ええっ?ど、どうしてですか?」
「おまえは相葉と杏奈さんからの依頼で大野という人物を調査していたよな?」
「は、はい。してましたけど・・・それが何か?」
「松本って人の事は知ってるよな?」
「え、知ってますけど。」
「その松本という人から、調査依頼が入った。」
「は?」
「その調査対象人物はおまえだよ。」
「は?えっ?お、俺?」
「うちの就業規約は分かってるよな?」
「も、もちろん。」
「だったらどうして直接関わったりしたんだ?」
「そ、それは・・・」
「おまえは何やってるんだ?探偵が調査されてどうする。幸いまだ先方はおまえの事を何も知らない。今ならまだ何とでもなる。」
「ま、松本さんは何で俺のことなんか・・・」
「心当たりはあるだろう?」
「いや、でも・・・」
「いくら言い訳したところでおまえが調査対象になってる事は事実だ。おまえが探偵で大野さんを調査してた事がバレてみろ。杏奈さんにも迷惑が掛かる事くらいわかるだろ?とにかくお前は今直ぐ帰宅しろ。こちらから連絡するまでは自宅で謹慎するように。」
「そ、そんなぁ。」
驚いた。大野さんは全面否定したけど、あの人、潤って人はやっぱり大野さんの事が好きなんだ。だけどまさかこの俺を調査依頼だなんて・・・
「ま、奇跡的にうちに依頼してくれたのがおまえにとっては運の付きだな。」
冗談じゃないよ。何でよりによってうちに依頼してくるの?
「職業以外のおまえの情報は全て依頼人の松本さんに報告するから。」
「あっ!一つお願いが有ります。」
「何だ?」
「俺、話の流れで役者目指して養成所に通ってるって、大野さんに嘘ついちゃったんです。だから・・・そこは合わせて貰えますか?」
「他にないだろうな?」
「あ・・・あと、好きな人が男だって言いました。」
「本当なのか?」
「そんなわけ・・・」
「相手は?」
「は?」
「相手の名前とか話したか?」
「いえ・・・そこまでは・・・」
「じゃ、適当にあてがうか・・・ま、他にも有るかもしれないから出来れば今日中に思い出せ。思い出したら直ぐに連絡しろ。」
マジか・・・
「所長?」
「何だ?」
「俺、クビですか?」
「処分はこの件が片付いてから連絡する。」
「そうですか・・・この度はご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
「うちも出来るだけの事はする。まったく、おまえにしては珍しいミスだな。」
「すみません。」
俺はガックリと項垂れて所長の部屋を出た。
「ニノ?」
「相葉さん・・・」
「所長なんて?」
「俺、クビかもしんないって。」
「ま、マジで?」
「とにかく暫くここには来るなって。」
「そ、そうか・・・ニノがこんなミスするなんて・・・まだ信じられないよ。だけど俺にも責任は有る。あの時俺が余計な電話さえしなかったらさ・・・」
「そもそも俺は探偵なんか向いて無かったのかもね。」
「そ、そんなこと・・・」
「それじゃ、俺帰るわ。」
「まだクビだと決まった訳じゃないよね?諦めちゃだめだからね?」
「うん・・・じゃ、またね。」
これから俺はどうなっちゃうんだろう?あまりの衝撃的展開に、俺は現実を受け止める事で精一杯だった。
つづく