真夜中の虹 12

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真夜中の虹 12

 

勤務先の探偵事務所から謹慎処分を喰らってしまった俺は、やむなく自宅で待機することになった。恐らく俺はクビになる。会社の規約では、自分が探偵だということが調査対象者に判明してしまう事は完全にNGだ。現時点では勿論俺の正体はバレてない。だけど、これが他の探偵事務所や興信所を使われてたらと思うとゾッとする。仮にうちの事務所が口裏を合わせてくれたとしても、これまでのように普通に出勤するのも難しくなる。万が一俺の行動を一部始終あの人にマークされるようなことがあれば、俺が探偵の仕事をしてることがバレるのは時間の問題だ。それにしても、今思えば俺が大野さんちに泊めてもらった翌朝、松本さんが電話で俺が何者なのかを凄く気にしてた。大野さんはおまえには関係ないって冷たくあしらっていた。あんな言い方すれば、心配になるの当たり前だよな。自分が長年好意を寄せてきた人が突然何処の馬の骨だか分かんないヤツを気軽に家に泊められたんじゃ、居ても立っても居られないのは当然だと思う。ただの友達って言葉ほど信用できないものはない。実際はただの友達以下なんだけどね・・・結局俺は調査の為に大野さんに近付いたけど、あの二人の関係を拗らせただけで、挙句の果てには職を失う程の失敗を犯してしまった。松本さんが調査依頼を取り消してでもくれない限り、俺が探偵に復帰することはまず無いと思う。

 

大人しく自宅待機して所長からクビだと言われるのを待つなんて、まるで有罪だと分かってて裁判長からの判決を待つ受刑者の気分だ。それに処分での退職となると、退職金もまともに出ないかもしれない。生活費や車のローンとかだってあるんだから、さっさと次の仕事を決めなきゃ地獄行き確定みたいなもんだ。先の事考えたらとても大人しく自宅待機なんてしてられない。俺は謹慎の身だけどスマホのサイトで仕事を探して面接を受けに来てた。

運転免許意外にこれといった資格を持たない俺は、就活と言ってもかなり職種が限られてくる。サイトの中に一つだけ気になる職種があった。それは「マネージメント」という職業だった。色々自分で考えるよりも直接聞いた方が早いと思い、直ぐにその会社に連絡をしてみると、直ぐに会ってみたいと先方が言ってきたので翌日には面接って流れだった。

「初めまして。昨日お電話しました、二宮ですが。」

「あ・・・君が?まぁ入ってよ。」

「は、はい。失礼します。」

「僕はここの責任者の櫻井といいます。宜しく。」

その人は俺にそう言って名刺を差し出した。その人は経営者にしては若くて、男の俺が言うのもアレだけど、この人モテるんだろうな・・・って思うくらいカッコイイ。

「早速だけど、うちで働くなら何時から来れる?」

「え?あ・・・勿論採用して貰えるなら直ぐにでも。」

「うちの仕事はご依頼のお客様のマネジメントだけど・・・つい先日一人退職しちゃってね。こちらとしては直ぐにでも入って貰いたいわけよ。」

「は、はぁ・・・で、あの、マネジメントってどんな事をすればいいんでしょう?」

「簡単に説明すると、秘書かな・・・」

「秘書?僕、何も資格持ってないですけど。」

「ああ~、資格とかそういうの要らないんで。特に今回お願いするところは秘書というより、どちらかというとお手伝いさんみたいな感じだから。」

「お手伝い・・・?」

「うん。あっ、君は犬は大丈夫?」

「犬?え、ええ・・・まぁ・・・」

「良かった。一番大事な事だからさ。主に犬の散歩やお世話を任されるから。」

「はぁ。」

そんなんでお給料貰えるの?ラッキーだな。

「勿論、時々掃除や買い物もお願いされると思うけどね。」

「特に難しいことではなさそうですね。」

「一つだけ条件としては最低3か月は何が有っても辞めないでね。先方が君の事を気に入れば専属として長く雇って貰えるから、頑張り次第ってことかな。」

「それじゃ、僕採用して貰えるんですか?」

「うん、一応先方にも僕と一緒に面接には言って貰うけど、心配は要らないよ。何も問題は無さそうだから。」

「あ、ありがとうございます。何が出来るか分かりませんけど、頑張ります。」

「それじゃ、いつにしよう?先方への面接。」

「明日にでも大丈夫です。」

「それじゃ、先方に確認してから僕から連絡するので。」

「宜しくお願いします。」

ここまでスムーズに再就職が決まるとは思ってもみなかった。探偵の仕事に未練がないというわけじゃないけど、もう終わった事はどうしようもないから次に進むしかないってこの時は思ってた。

 

つづく

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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