真夜中の虹 14

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真夜中の虹 14

 

 

完全に断るつもりだったマネージャーの仕事だったけど、お給料の話を聞いた途端思い直して引き受けた俺。どんだけ現金なやつだよって自分でも思ったけど、一番そう思ったのは恐らく櫻井さんだ。それでも俺が引き受けてくれて本当に良かったって安堵した表情で歓迎してくれたんで助かった。俺は早速その後、櫻井さんと大野さんに会いに行くことになった。顔見知りだと言っても、これからは仕事として関わってくわけだから、キチンと面談して契約を交わさないといけないらしい。

「大野さん、お待たせしてすみません。連れてきましたよ。」

「うん、二人ともいらっしゃい。」

「大野さん、どうして教えてくれなかったの?二宮君と面識あること。」

「え?だって、実際に顔見るまでは確信が持てなかったんだもの。」

「そっか。もう驚いちゃってさぁ。」

「おいらも驚いたよ。ホントにあのニノ?って思ったもん。」

「俺もビックリしましたよ。櫻井さんからあなたのマネージメントするって説明聞くまでは全く知らなかったんで。」

「そっかぁ。でもニノで良かった。」

「そんだけ信頼あるなら問題無いよね?大野さん、二宮君に決めて良い?」

「もちろん。」

「それじゃ、早速だけど契約書にサインしてくれる?」

「うん。」

「二宮君、仕事の内容は直接大野さんに聞いて。何か困った事があればいつでも俺に連絡してくれて良いから。」

「あ、はい。」

「翔ちゃんは長いことおいらのマネージャーしてくれてたの。おいらのことは何でも知ってるから・・・」

「そうらしいですね。」

「何でもって言い方は語弊がある。俺にも知らない事は沢山あるよ。」

「え?そうなの?何でも知ってると思ってた。」

「あー、まぁ確かに8割方分かると言えば分かる。」

「でしょ?んふふ・・・」

「流石に長い付き合いだったからね。」

「小太郎は翔ちゃんにしか懐かなかったんだけど、ニノにも直ぐに懐いたんだ。」

「え?それホントに?」

「ええ・・・まぁ。」

「なるほど、それであなたの重視してたマネージャーの条件を軽くクリアしたってわけだね。」

「うん、でもまさかニノが仕事探してたとは知らなかったな・・・」

そりゃ、あなたの幼馴染みが余計な事してくれなかったらこんな事にはなってませんでしたよ。って、俺は心の中で呟いた。ま、元々は大野さんが原因でクビになったも同然なんだから、本音言わせて貰うなら責任取ってって言いたいくらいだよ。こっちだってまさかこの人に雇われることになるなんて思ってもみない展開なんだから。

「それじゃ大野さん、早速今日から彼のこと宜しくお願いしますよ。」

「おうっ」

「あ、それから・・・あんまり彼にプライベートごととか無茶難題は押し付けないでよね。」

「そんなこと分かってるよ。」

「そう?あなた俺がマネージャーしてた頃はやれ釣りに付き合えだとかキャンプ付き合えだとか、仕事以外の案件多かった気がするけど?」

「え?どーして?それの何が悪いの?」

「何がって・・・ま、いいや。二宮君、とにかく俺次の面談有るからもう会社に戻るわ。何かあったら連絡して。」

「了解です。」

俺はこの時ようやく気付いたんだけど・・・この人ってかなりの天然ちゃんっていうか、色々と鈍いって思った。普通ならこんな人に雇われて大丈夫なんだろうか?って不安を覚えるんだろうけど、俺はその逆だった。こういう人間って俺からすると結構扱い易かったりする。

「大野さん、俺、早速小太郎のお散歩行ってきましょうか?」

「お、そりゃ助かるわ。」

「それじゃ、行ってきます。」

犬の散歩だけで給料5倍なんて、そんな都合のいい話は流石にないだろうけど、大野さん相手なら前の仕事なんかより全然気が楽だ。俺はマンションのすぐ傍の公園へリード線を引っ張って小太郎の散歩に出掛けた。公園周りを2,3周してから

「よーし、小太郎、そろそろ戻るか?」

その場にしゃがんで小太郎の身体撫でまわして立ち上がったその時、あの松本って人が俺の目の前に凄い顔して立っていた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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