真夜中の虹 36
こうして俺は大野さんと5歳児の真琴くんと3人で沖縄に移住する事を決めた。移住する、と言っても仕事で東京へは時々行かなきゃならないので、とりあえず都内のマンションはそのまま残すことにした。俺はその後一旦東京へ戻り、必要な荷物の送付と小太郎を引き取る為に櫻井さんの事務所へと向かった。
「櫻井さん、長らくすみませんでした。」
「うん、話は全て大野さんから聞いたよ。色々大変だったね。」
「あ、真琴くんの事?」
「まぁ、本当に大変なのはこれからだよね。大野さんもニノが居てくれて心強いと思うよ。」
「俺は別に何もしませんけどね。」
「いやいや・・・傍に居てくれるだけでも心強いと思うけど。」
「親は無くても子は育つって言いますからね。何とかなるでしょ。」
「俺も時間作って一度沖縄に逢いに行くよ。」
「ええ。是非。」
「仕事は続けるそうだね?」
「本人はそう言ってます。」
「良かったよ。コンテストも受賞したことだから、これからどんどん依頼も増えて来るだろうし、そういう意味でもニノのサポートは必要だろうから・・・。」
「俺も正直本当は迷ったんですけどね。」
「ん?何故?」
「子供が苦手なんで・・・しかも慣れない土地に住むって抵抗あるし。」
「それでもよく決心したね。」
「だって、仕事続けるって言ってる以上はマネージャー必須でしょ?俺が断ったら別のマネージャーが新たに着くわけじゃないですか。何かしゃくなんだよなぁ。美味しいとこだけ持ってかれる感じがして・・・」
「それってニノが本当に大野さんの事が好きだから・・・じゃない?」
「えっ///」
改めて櫻井さんからそう言われてドキッとした。これまでは話の流れだったり、自ら作ってしまった嘘を隠す為に大野さんとは付き合うなんて事になってた。だけど、本当にそれだけなら沖縄移住まで流石に付いて行かないと思う。沖縄で松本さんに話した事も嘘じゃない。確かに真琴くんには多額のジョニーさんの遺産が付いている。けど、そんな金の話なんて正直どうでも良くて、やっぱり櫻井さんが言うみたいに、俺はもうあの人の事を本気で好きになってしまったのかも知れない。俺が他の人に譲りたくないものは、大野さんの恋人という立場とマネージャーの座なのかもしれないって、この時ハッキリ気付いてしまった。
「松本君から話を聞いて俺もビックリしたんだけど、元々二人は顔見知りだったわけで、そういうのって何て言うかさ、運命の赤い糸で結ばれてたんじゃないかって思ったりもするわけよ。」
「赤い糸ねぇ・・・」
「俺は二人を応援するよ。困ったこと、俺に出来ることが有ればいつでも遠慮なく言ってよ。」
「うん、ありがとうございます。」
俺が傍に居るより、櫻井さんのその言葉の方がよっぽどあの人には心強いと思えるだろう。そして、俺は櫻井さんに預けてた小太郎を引き取りマンションへ帰った。そして数日後には再び沖縄に戻らなければならないため、大野さんに頼まれた必要な荷物をリストを見ながら段ボール箱に詰めてせっせと荷造りをしていた。するとスマホの着信音が鳴り響いた。
「もしもし・・・あ、相葉さん?」
「あ、ニノ?ちょっとだけ会えない?」
「えっ・・・あ、うん。俺も話があったの。」
沖縄に戻る前に例の調査の事はどうなったのかは聞いておきたかった。
「ちょっと俺忙しくてそんなに時間取れないんだけど、それでもいい?」
「今から出れる?」
「うん・・・それじゃ、事務所の近くのカフェで待ってて。」
俺は相葉さんと会うべく約束の場所へと向かった。
つづく