真夜中の虹 40
風呂上りの大野さんが、テーブルの上に並んでるビールの空き缶を見てツボに入っちゃったのかクスクスと笑いが止まらない。
「んふふふ・・・」
「な、なんだよ?」
「ふふっ・・・いや、おいらも飲もうかな。」
そう言って冷蔵庫からビールを取り出すと、俺の隣に腰掛けた。ビールを飲みながらもチラチラと俺の顔を見ては愉快そうに笑う。
「何がそんなにおかしいんだよ?」
自分の事を笑われてるのは明らかだから、俺は不愉快そうに彼を睨んだ。
「いや・・・そんなに喉乾いてたのかなって思って・・・」
「あっ、う、うん。悪い?」
「悪くはないけど・・・」
大野さんは途端に反対側に顔を向けて堪えきれないといった感じでまた笑ってる。
「何なのよ?」
「うふふふっ・・・いや・・・ゴメン、ニノってさ、めっちゃ分かり易いなって思って・・・」
「だから何が?」
「おいらはニノのそういうところも大好き。」
「えっ///ひ、冷やかさないで下さい。」
俺が変にテンパってたこと、完全に見抜かれてる。俺は恥かしくて何とか誤魔化そうとするけど、大野さんは俺とは真逆に落ち着いてて何だか余計に悔しくなってきた。
「ゴメンね。」
「何で謝るの?」
「えっ?だって・・・」
俺がさっきあんな事したからだろ?ってまるで心の声まで聞こえてくるようだ。俺が次の1本を取りに行こうと立ち上がったら、大野さんが俺の手を掴んでその行く手を阻んだ。
「おいらが取ってきてあげるよ。」
「えっ・・・あ、うん。」
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとう・・・何コレ?」
「ロック。」
手渡されたグラスに口を付けたら、それはただの氷水だった。
「あっ、騙したね?」
「騙してないよ。ロックには違いないもん。それにこれ以上飲んだら酔っ払っちゃうでしょ?」
「えっ?いいじゃん、どうせ今日はもう寝るだけなんだから。」
「駄目だよ、言っとくけどおいらは泥酔してるニノは抱かないからね?」
「だっ///」
俺が真っ赤になって両手でそれを覆い隠したら、再び大野さんが大笑いした。
「ニノさぁ・・・以前話してた同性愛って話、本当はアレ嘘でしょ?」
「えっ・・・」
「演劇の養成所の男の子好きになったって話だよ。」
「ど、どうして?」
「おいら、ニノの事本当に好きだから分かるよ。」
「お、俺だって・・・」
「だったら、もうこれからはお互い嘘つくの辞めないか?」
「大野さん、ごめんなさい・・・実は俺・・・」
「あ、待って。なにもおいらはニノを責めてるわけじゃないんだ。ニノが本気でおいらの事好きかどうかを知りたいの。そうでないと次へは進めないから。」
つ、次って・・・
「本気じゃなかったらこんな沖縄とかまで付いて来る?」
「それだけ聞けたら十分。さっ、行こう!」
「えっ・・・」
大野さんは俺の腕を引っ張って寝室へと導いた。そして部屋の灯りは消したまま再びキスをしながらベッドの上に縺れ合いながら転がった。いつもフニャッと柔らかく優しい大野さんだけど、Tシャツを脱ぎ捨て上半身裸になると急に男らしい表情に変わるその瞬間を見てしまい、俺の心臓はドキドキと高鳴った。そして、俺の緊張を解す様に優しく閉じた瞼にキスをした。その唇はゆっくりと頬を伝って唇へと移動して、さっきよりも更に濃厚で熱いキスを交わす。そして、何かを思い出したように唇が離れて・・・
「それはいいんだけど・・・おいら、男としたことないからやり方分かんない。」
「えっ・・・」
「まぁ、どうにかなるっしょ。」
俺の目を見てニッコリ微笑んだ後、再びキスの雨が降って来た。
つづく