真夜中の虹 53
「これってどういうことなの?あなた、ホントに真琴くんの父親なんだよね?」
「勿論そうだよ。」
「あの・・・DNA鑑定受けてますよね?」
「そんなの受けてないよ。」
「ええっ?それじゃ、自分が父親だってどうして言い切れるの?」
「彼女がそう言ったんだ。」
「はぁ?」
「真琴を身籠った時に父親はおいらだって・・・」
「ふーん。つまり、その時あなたには心当たりがあったんだ?」
「心当たり?」
「彼女と肉体関係はあったんですよね?」
「う、うん・・・多分・・・」
「多分?何それ?あ、今更怒らないんでちゃんと説明して下さい。」
「それが・・・おいら酔っ払ってたから覚えてないんだよ。だけど、朝起きたらおいらパンツ一丁でベッドに横になってて・・・横に彼女も寝てて・・・」
「は?まさか・・・覚えてないんですか?」
「全然覚えてない。」
「あなたねぇ・・・」
「え・・・」
「いや、俺もちゃんと調べもせずに相葉さんの話を鵜呑みにしちゃったものだから・・・」
「あいば?」
「いえ、こっちの話です。あのさ、鑑定は受けてみなよ。」
「いいよ。鑑定なんて、そんなのどうでも・・・」
「どうでも良くないんですよ。さっきの弁護士の人も言ってたでしょ。どのみち証拠は必要なんですよ。」
「真琴は赤ん坊の時においらが引き取ったんだ。だけど、おいらもどうしたらいいか分からなくて、ジョニーさんに相談したら、養子として預かるって言ってくれて・・・・おいらは育てる気だったんだけど、仕事が忙しかったからジョニーさんが無理だって・・・」
「そしたらそのジョニーさんが病に倒れてあなたを沖縄まで呼び寄せて真琴くんのことを任された、ですよね?」
「う、うん。」
「ていうかさ、何で疑わなかったの?普通疑うよね?今の話だと。」
「えっ?」
「自分の子って言われた時だよ。ま、その時は疑わなかったとしても、あなたの絵を転売された時には流石に気付くでしょ。」
「全然疑わなかった。」
「あなた、嵌められたんですよ。彼女に・・・ま、その後その事は深く後悔したみたいだけど。でなきゃ自殺なんて考えないだろうし。」
「もう、いいじゃん。彼女の事は、おいらにも責任が有るんだよ。だから、真琴はおいらが責任もって育てるって決めたんだ。」
「以前、おばさんも言ってたけど、子供は動物飼うのと訳が違うんだって。」
「そんなの分かってるよ。」
「分かってません!いい?もしもこれが反対の立場ならどう思う?あなたが遠藤とかいう人の立場で、実の子を取り返したくて弁護士を頼んで育ての親に談判したのは良いけど、一切取り合って貰えない・・・これって確かに都合良過ぎるとは思うけど、事情がどうであれ自分の子供を自分で責任もって育てようって決心しての事だと思うんですよね。せめて話し合いには応じてあげないと。」
「真琴は・・・おいらの子だよ。誰にも渡さない。」
「智・・・」
「カズには分かんないんだよ。おいらの気持ちなんて・・・本当は子持ちのおいらなんかと一緒に居るのが嫌なんだろ?」
「いや、待ってよ。俺はそんなこと一言も・・・」
「いいよ、無理しなくても。真琴にはおいらが必要なんだ。誰が何と言おうと真琴はおいらが育てる。」
「あ、そう・・・それじゃ勝手にすれば。俺はあなたと真琴の為に言ってるのに・・・そうか、それも余計なお世話でしたね。俺はあなたとは赤の他人ですものね。そんなに真琴が可愛ければ優芽ちゃんのお母さんと一緒になってあげたらどうです?」
「か、カズ?」
「DNA鑑定は受けるべきです。親権の話は二の次ですよ。」
「しつこいな。受けないって言ったら受けないって。」
「それなら・・・俺はここを出て行きます。」
「は?どうしてだよ。」
「はん・・・どうせあなたにも俺の気持ちなんて分かんないでしょうね。」
智に子供がいると聞いた時、この俺がどれほどショックだったかなんて、あなたには分かりっこない。真琴、真琴って・・・俺だって、俺にだってあなたが必要な事くらい、どうして分かってくれないんだよ。
つづく