真夜中の虹 56

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真夜中の虹 56

 

 

 

「何だよ?俺が電話するまで部屋で待ってれば良かったのに。ずぶ濡れじゃないの。ほら、さっさと乗って・・・」

「うん・・・」

相葉さんの車の後部座席に乗り込むと、相葉さんはバックミラー越しに俺の様子を伺いながら至って普通のトーンで話し掛けてくる。

「何があった?」

「えっ?」

「大野さんとだよ。」

「何もないよ・・・」

「ニノが沖縄に着いてくって言った時、俺も薄々感じてはいたんだけどね。おたくら普通の関係じゃないんでしょ?喧嘩でもしちゃった?」

「いいや。」

「浮気でもされた?」

「話さなきゃ駄目ですか?」

「別に話したくないなら言わなくてもいいけど・・・」

いきなり電話してきたかと思えば仕事させてくれ、部屋探してる、と一方的に言われたら流石に彼にも理由を聞く権利はあるだろう。だけど、今は本当に何も話したくない。

「ごめん。今は・・・話したくない。」

「ま、一度荷物置いてさ、久し振りだし飲みにでも行っとく?」

「あ、うん。」

相葉さんは昔からそうだけど、俺には120%優しい。俺もそれを分かってるからこそ頼ってしまう。勿論甘えっぱなしというわけにもいかないだろうから、一時的に避難させて貰うってだけ。相葉さんの自宅に荷物を置いてから、近くの相葉さん行きつけの居酒屋に二人で飲みに行った。

「ニノさぁ、行くとこないなら暫くうちに居ると良いよ。」

「助かります。出来るだけ早く住むところ見つけて出て行くから。」

「いいよ。そんなの見つけなくても。うちは狭いけど、俺は殆ど寝る以外に使ってないから。」

「仕事は明日からでも手伝うよ。」

「うーん・・・そのことなんだけどさ・・・」

「え?何か都合悪いの?」

「いや・・・ニノがうちの仕事手伝ってくれるのは素人雇うより全然有難いよ。」

「うん、だよね?」

「でもさぁ・・・」

「何?」

「うん、だからね・・・何というか・・・暫くはまだ仕事はいいよ。」

「どうして?俺、直ぐにでも働かないと。」

「ニノは大野さんところに行ってまだ1年も経ってないよね?」

「そ、そうだけど。」

「ニノは決断するとあっさり辞めちゃうとこ有るだろ?勿論それぞれに理由は有るにせよ、雇う側から言わせて貰うとさ、居なくなった時めちゃめちゃ痛手なんだよな。」

流石に独立しただけの事はあるな。経営者の意見としてはごもっともって感じ。自分が逆の立場だとしても、きっと俺みたいなヤツはそう簡単には雇わない。だけど、俺にも言い分はある。

「大野さんところはさ、仕事と恋愛を絡めちゃったから・・・あなたのところでそれは無いから大丈夫だって。」

「俺の話聞いてる?色々理由は有るにせよ、って言ったんだけど。」

「もう、だったらいいよ。頼まない。」

「ニノ、うちには居たいだけいてくれていいからさ、少し頭冷やせよ。」

「えっ・・・」

「泣くほど辛い事あったから家出なんてしたんだろ。時間が経てば沸いてる物もいつか必ず冷めるよ。」

やっぱり泣いてた事バレてた。だったら、もういいかなって・・・お酒入ったこともあって、俺は家出した理由を相葉さんに語り出した。

「子供・・・引き取って二人で育ててたんだ。」

「あっ、大野さんの?」

「そう。でも、本当の子かどうか分からないのに、俺には責任が有るって・・・」

「本当の子じゃないの?」

「あの人馬鹿が付くほどお人好しなんですよ。」

「なるほどね。ニノはその子にヤキモチ妬いてるんだ?」

「は?まさか。そんなんじゃないよ。本当の父親と名乗る人が現れたんだ。そのことが事実なら真琴はその人に返してあげるのが筋じゃないかって・・・俺がそう言ったら・・・」

「喧嘩になったわけだ。」

「喧嘩ではないけど・・・」

「俺が大野さんでも得体の知れない相手に愛情注いでた子供を引き渡すなんて出来ないかな。そうだニノ、その父親って人の事、自分である程度調べてみたらどう?俺も協力するから。」

「えっ・・・」

「何年探偵の仕事やってたんだよ。こういう時にフル活用しないとだよ。」

「で、でも・・・」

「うちで働くんだよね?丁度いいじゃん。依頼人は二宮和也。調査対象者は真琴くんの父親を名乗る人。成功報酬は当面の生活費って事でどう?」

 

 

 

つづく

 

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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