真夜中の虹 62
「あの、初めまして。大野さん、僕ニノの友人の相葉と言います。先日は電話で失礼しました。」
「あ、カズがお世話になってます。ところでカズは?」
「それが・・・なんてお詫びすればいいのか。」
「えっ・・・」
「散々夕べ言って聞かせたんですけどね・・・。」
「一緒じゃないの?」
「一緒に連れて帰るつもりだったんですよ。俺はね・・・だけど、ニノのヤツ朝から勝手に居なくなっちゃって。」
「いなくなった?」
「はい。何度も電話するんですけど、留守電になっちゃうんです。あいつ、全く何考えてんだろ。」
「そんなにおいらに逢いたくないのかな・・・」
「ニノは意地っ張りなところ有るから。だけど、本当は大野さんに逢いたくて仕方ないんだと思いますよ。」
「おいら・・・カズの気持ちも考えずに酷い事言っちまったから・・・相葉さんって言ったっけ?カズとはどういう知り合い?」
「以前一緒に働いてたんです。同じ職場で・・・」
「カズは真っ先にあなたの所に?」
「え?あぁ・・・真っ先かどうかは分かりませんけど、あなたの家を飛び出してホテルに泊まろうとしてたんですよ。行くとこ無いって言うから、うちで良ければ泊めてあげるって言ったら、暫く世話になるって・・・」
「そっか・・・」
「迎えに行ったら雨の中傘も持たずにずぶ濡れで・・・しかも泣いてて。俺の前では強がって何事もなかったように振舞ってましたけど、相当辛い事あったんだって直ぐに分かりましたよ。大野さん、あいつ見た目強がってますけど、結構メンタル脆いんですよ。今日、俺のところから逃げ出したのも正直あなたに会うのが怖かったんじゃないかな。」
「怖い?」
「あ、大野さんはお優しいのは分かってますよ。なんていうか・・・自分が傷付くのを恐れてるっていうか?」
「おいら、もうこれ以上カズを傷付けたりしないって誓うのに・・・」
「俺はニノじゃないから、本心かは分からないけど、自分は真琴くんに敵わないと思ってるんじゃないかな。」
「ええ、勿論それは分かります。けど、ニノにとっては真琴くんはライバル的な存在だったんじゃないかなって。」
「え?意味が分かんないよ。」
「ニノは大野さんに自分だけを見て欲しかったんじゃないかな。そしてそんな事、きっとニノ自信も馬鹿げてるって分かってるから、自分の中で物凄い葛藤があったんだと思いますよ。でもね、大野さん・・・。ニノの良い所は力ずくで真琴くんからあなたを引き離さないところですよ。今回の件で良く分かりました。」
「な、何が?」
「ニノが本気であなたに惚れてるってこと。」
「そ、それならどうして逃げるんだ?」
「そうなんですよねぇ。そこが俺にも分かんないんですけど・・・もしかすると・・・」
「な、何?」
「まだ、何かやり残してる事があるのかも。」
「何かって?」
「だから・・・それは俺にも分かんないです。だけどそれならきっと心配ないですよ。ニノが気が済んだら必ず大野さんの所に戻って来ますって。」
「ほ、本当に?」
「ま、そんな事は無いと思いますけど、もしもこのまま行くへが分からなくなったら、俺が責任もって捜索しますよ。」
「捜索?」
「あ、俺こう見えて探偵なんで。だから、心配は御無用ですよ。」
つづく