真夜中の虹 79
佐伯は一人でエレベーターに乗り込んだ。俺は急いでそのエレベーターに駆け込み、顔がばれないように被ってた帽子を深めに被って同乗してる人影に隠れた。エレベーターが目的のフロアに到着し、俺はなるべく佐伯に気付かれない様に距離を保って尾行した。佐伯はとある部屋の前に立ち止まると、ポケットからルームキーらしきものを取り出して自分で鍵を開けて部屋に入って行った。俺は直ぐさまその部屋の番号を確認したんだけど、そこはみのりちゃんが言ってた1096号ではなく、1102号室だった。俺は急いでみのりちゃんに電話を掛けた。
「あ、もしもし・・・みのりちゃん、さっきのみのりちゃんが尾行した彼女、間違いなく1096号だったんだよね?」
「ええ。間違いありません。あ、さっき撮った画像送りますね。」
みのりちゃんがメールで送って来た画像を即行確認した。
「マジか・・・」
「どうかなさったんですか?」
「ん?あ、ゴメン。多分みのりちゃんが尾行してくれた人は無関係。あいつは今1102号室に入って行った。」
「ええっ?本当ですか?・・・すみません。」
「いやいや・・・みのりちゃんは悪くないから。」
「でも・・・」
「とにかく一旦戻るから。」
「兄ちゃん、ここで何してる?」
その声に慌てて電話を切って振り返ると、ノーネクタイに柄シャツ、サングラスにスーツ姿の見るからに反社って風貌の男二人が俺を物凄い剣幕で睨み付けてる。
「あ、いや・・・へ、部屋が何処か分かんなくなっちゃって。か、彼女に確認してたところで・・・」
「兄ちゃん、嘘は良くないなぁ。まぁ、あっちでゆっくり話聞かせて貰うわ。」
最悪だ。佐伯の奴、護衛にチンピラなんて雇ってるのかよ。こうなると、逃げるなんてことも出来ない。俺は佐伯の張り込みを一旦諦めると、男達に両脇掴まれて、佐伯が入った1102号の隣の1103号室に連れていかれた。
「兄ちゃん、正直に話せば手荒な事はせんから安心しろ。あんた、東京のもんやろ?何処の記者だ?」
「は?記者?お、俺はそんなんじゃありませんよ。」
「だったら誰に頼まれた?」
「だから、何の話ですか?俺は彼女と旅行に来てるだけですよ。」
「まぁ、ええわ。その彼女とやらをこの部屋に呼んでくれるか?」
「ええっ?ど、どうして?」
「ええから、つべこべ言わんでさっさと呼べ!」
俺は仕方なくスマホを取り出すと、みのりちゃんに電話を掛けた。勿論、呼ぶ気など無い。この状況を何とか悟らせようと試みただけ。
「あ、みのり?俺だけどさ・・・今何処いる?至急・・・来て欲しいんだけど・・・1103号室。」
「・・・二宮さん?」
突然名前でしかも呼び捨てにすれば、流石に違和感あるから変だって気付くだろう。
「あっ、そんな遠くに居るの?それじゃ、1時間は掛かるね。うん、それでもいいから急いで向かって。」
「に、二宮さん???」
「それじゃ、みのり、待ってっから・・・」
みのりちゃんに話す隙を与えない。最後に再度呼び捨てする・・・俺としては完璧な芝居だ。その後、携帯の電源をオフにする。みのりちゃんは必ず折り返し掛けてくるはず。電源が入っていなければ、きっと何かを悟ってくれるはず。
「彼女ちょっと遠くに居るから少し時間掛かるって言ってましたけど、直ぐに向かうそうです。」
「そうか・・・兄ちゃん、悪く思わんでくれ。あんたの彼女とやらが来たら直ぐに開放してやるから。」
間違いなくこいつらはあの佐伯が雇ったチンピラだろう。俺を週刊誌の記者だと勘違いしたくらいだもの。とにかくみのりちゃんは勘が鋭い子だから、俺の話し方や呼び捨てに何かしらの異変が起きてる事に気付いてくれると信じたい。頼むから来ないでくれ、と心の中で祈った。
「兄ちゃん、彼女1時間も掛かるんなら、ワシら少し出掛けてくるから、少しの間眠っててくれるか?」
「えっ?」
次の瞬間、口元をタオルで押さえられ、それは恐らく催眠ガス・・・そう気付いたのと同時に俺は気を失いベッドの上に倒れ込んだ。
つづく
2022年も残すところあと僅かですね。
嵐が活動休止に入ってそろそろ2年が経とうとしています。皆さんも同じかもしれませんが、私を取り巻く環境も随分変わりつつあり、
コロナの影響も勿論ありますが、嵐会のようなイベントごともすっかり無くなってしまい、寂しく感じている今日この頃です。
せめて大宮をこよなく愛する大宮ファンへ、大宮不足を少しでも解消できればと、のんびりマイペースにお話を描いてまいりました。
このような拙いブログに長くお付き合いを頂き、改めて感謝しかございません。
プライベートでも何かと忙しいこの頃でして、更新が不定期にはなっていますが(^-^;
このお話も含めて、来年も引き続き健康を維持しながら妄想を書いて行けたらと思っております。
お話の方は万事休す、大変中途半端ではありますが、勝手ながら今年の更新は本日で最後とさせて頂きます。
今年もご愛読頂きありがとうございました。来年も宜しくお願いします。
読者の皆様もどうぞ良いお年をお迎えください。
蒼ミモザ