真夜中の虹 最終話

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真夜中の虹 最終話

 

 

こうして俺は智を車に乗せて自宅まで連れて帰った。帰るまでの車内では会話も無かった。というか、めっちゃ気まずかった。何で俺を避けてたの?どうしてうちに戻らないの?黙ってても智の心の中の声は俺には聞こえてくるようだった。勿論もうこれ以上俺はこの人から逃げるつもりはない。ちゃんとこの人と向き合って話さなきゃ。その覚悟だけは出来ていた。

「へぇ・・・めっちゃ広いな。ここに一人で住んでるのか?」

「ええ、まぁ。あっ、流石にその格好じゃ寛げないよね?とりあえずシャワー浴びてくれば?俺の服貸すから。」

「えっ?いいの?」

「そのまんまだと風邪引きますよ。」

俺はずぶ濡れの智をバスルームに案内して、クローゼットから自分のTシャツとジャージ、下着とかを取り出すと、それを脱衣所に持って来てドア越しに声を掛けた。

「着替え、ここに置いときますね。」

「あ、すまない。」

この会話、確かに1年前までは日常だった。マネージャーって立場から恋人としての暮らし・・・あの幸せだった頃をふと思い出して胸がキュンと締め付けられた。

「カズ・・・あのさ・・・」

智がシャワーを終えてリビングに戻って来た。

「やっぱり俺達背格好が似てるからピッタリだね。」

「えっ、あっ、これか・・・うん、そうだな。」

何か言い掛けたのは知ってるけど、俺は智の言葉を遮るように話題を逸らした。

「カレー出来てますよ。温かいうちにどうぞ。」

「あ、うん。」

俺ときたら、また逃げてる。ちゃんと話をしなきゃ。

「あ、あの・・・」

「やっぱ、カズのカレーは絶品だわ。めちゃめちゃ美味かった。ご馳走様。」

「え?あぁ・・・はい、980円です。」

「そうか・・・そうだよな。待って、おいらの財布何処だ?」

「フフフッ、冗談ですよ。あなたからお金取るわけないでしょ。」

「えっ・・・」

「あれ?雨上がったみたいだね。そうそう、ここからの夜景が最高なんですよ。」

俺は冷蔵庫から缶ビールを2本取り出すと1本は智に手渡して、窓を開けてベランダに出た。

「通り雨だったんだぁ。もう星も出てるし・・・」

「へぇ・・・本当に綺麗だな・・・」

やっとこの人とこの星空を一緒に見れた。俺は堪ってたものが一気に込み上げて泣きそうになり、それを悟られない様に缶ビールの蓋を開けてゴクゴクと喉に流し込んだ。そんな俺を見て、隣で智も缶ビールに口を付けた。それから暫く二人で無言のまま星空を見上げ、智がぼそっと小声で話を始めた。

「カズ、覚えてる?」

「え?」

「おいらがカズを置いて沖縄に行った時のこと・・・」

「あっ・・・うん・・・」

「カズがおいらを追い掛けて沖縄に来てくれてさ、真琴と一緒においらと暮らしてくれるって言ったじゃん。あの時おいらカズみたいな人一生自分の前に現れない、大切にしなきゃって心から思ったんだよ。カズは器用そうに見えるけど、実は不器用なところ有る。おいら、カズが言葉にしなくても分かっちゃうんだよね。何でか分かるか?」

「な、何で?」

「カズは本質がおいらに似てるから・・・」

「そうかなぁ・・・」

「だからね、自分からは絶対に逢いに来てはくんないって分かってた。だって、あの時のおいらがそうだったから。」

「あの時って?」

「真琴を引き取った時だよ。あれは完全においらの事情だっただろ。だからカズを道ずれには出来ないと思ったんだ。だから話せなくてカズから逃げてた。だけどカズはおいらに逢いに来てくれた。それはどうして?」

「ど、どうしてって・・・」

好きだから、逢いたかったからに決まってる。

「おいらもカズが好きだし、絶対にこのままじゃ嫌だったし、逢いたかった。」

「まだ俺何も答えてませんけど。」

「おいらは何があってもカズを一生大切にするって決めたんだ。」

「智・・・」

「おいらはカズの考えてること分かってたからね。カズは自分の都合でおいらを待たせたって思ってる。」

「だ、だって、それは本当のことだもの。」

「真琴のことだって、おいらの都合だったよ?」

「もう、分かったから・・・ぜんぶ俺が悪かったよ・・・」

「んふふふ・・・カズは何にも悪くねぇよ。」

涙でぐちゃぐちゃになりながら、俺達は星空の下でどちらからでもなく、お互いの愛を確かめるかのように熱く長い口づけを交わした。こんなに好きなくせに、強がってた自分を殴ってやりたいって思ったくらいだ。だけど、好きだからこそ自分が好きな人の人生振り回しちゃいけないって思ってしまったんだよな。好きな人に振り回されるならそれも幸せなことなんだって、智の言葉でようやく俺は気付かされたし、目が覚めた。俺がもしも智の立場だったとしても、待ってたと思うし、それを逢いたくないなんて言われたら、俺は間違いなくぶち切れてただろう。そう考えたら、智は俺とはやっぱ違う。優しすぎるのよ、限りなく。

 

それから智は奥多摩の家がとにかく気に入って、直ぐに東京から引っ越して来た。智は奥多摩に絵画のギャラリーをオープンさせ、俺はその敷地内にカレー屋を移転オープンさせて忙しいけど充実した楽しい毎日を送ってる。

 

 

 

THE END

 

 

 

 

 

 

 

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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4件のコメント

  1. やっといいね!ができました。こういうのに慣れなくて😅いつも楽しみに読ませてもらってます。また素敵なお話をお願いします🙇‍♀️⤵️

    1. いいね!のお気遣いありがとうございます。沢山の妄想小説が有る中で、わたしのような文章力の無いお話を選んで読んで下さり、誠にありがとうございます。なかなか以前の様にスラスラと描けなくなってしまい途中何度も挫折しそうになったのですが、楽しみに読んで下さる読者様の温かい応援で最終話を迎える事が出来ました。少しの間、お休みをさせて頂くことになりますが、また再会しましたら宜しくお願い致します(^^)

  2. とても素敵なお話しでした。いつも投稿されるのを待ち焦がれてました。ハッピーエンドもとても素敵でした。
    私もイイネ!どうしてもしたくやっと出来ましたo(^o^)o

    1. 長らくのお付き合いと、コメント&いいね!ありがとうございます。スタート当初からすると、全体の半分以上も長くなってしまいました(^-^;
      最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。

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