第一章
潤くんのお膳立て②
和 「Jの話って何だったのかなぁ?」
智 「俺も松潤からニノが来る事何も聞かされてなかった」
和 「ふ~ん。面白いね・・・それでJは大野さんの事置いて帰っちゃったの?」
智 「うん。意味わかんネエだろ・・・」
和 「あの人なりに気を遣ってくれたんじゃないの」
智 「えっ?」
和 「ううん、こっちの話・・・」
まぁ、昔からそうなんだけど
俺達が二人っきりでプライベートで出掛けても
これといって話は弾まない。
今も何を話したらいいのか・・・正直わからない。
智 「ニノはずっと忙しいよな」
和 「そうだね。大野さんはちゃんと休めてる?」
智 「おいらはニノより時間有るから」
和 「そのわりにボーッとしてる事多いよね」
智 「ニノは偉いよ。殆ど寝てないのに遅刻もしないしさ」
和 「何度か寝坊しそうになったけどね(笑)」
智 「でも遅刻しないんだから偉いよ」
和 「そんな褒めてくれるんなら、何かご褒美でも下さいよ。」
智 「ご褒美?・・・例えば?」
和 「・・・」
智 「何か欲しいんだろ?」
和 「いいよ。どうせ聞くだけでくれないんでしょう」
智 「モノにもよるじゃん。車とか家とか言われてもそんなの絶対に無理だし。」
和 「お金とかそういうのじゃないよ。」
智 「へっ?それじゃ何?何が欲しいの?」
和 「聞いたらちゃんとくれるって約束してくれます?」
智 「だから、内容にもよるって・・・」
和 「だったら言いません。」
智 「なんだよ。気になるじゃんか。」
和 「もういいよ。誰も本気で言ってないし」
ちょっと拗ねた顔して口を尖らせるニノ。
機嫌損ねちゃったかな?だけど、そういうニノもまた堪んなく可愛らしい。
智 「まだ時間大丈夫?」
和 「何で?」
智 「ニノとこうやって飲むの久し振りだから、もう少しいいかなって」
和 「いいですよ。だけど明日はあなたも俺と同じ収録だからね」
智 「あ・・・そうかぁ。そうだったな。」
明日は朝からメンバー全員で番組の収録だった。
そろそろ帰らないとヤバイかな・・・。
ニノはそれでなくても殆ど寝てない筈だし。
だけど、俺達って本当にたいした話は何にもしてない。
和 「明日Jに会ったら聞かなきゃね。何を企んでるのか」
智 「えっ?」
和 「だってさ、どう考えても可笑しいでしょ。この状況。」
智 「う、うん・・・まぁ・・・」
和 「それとも何?大野さんは心当たりでも有るの?」
智 「いやっ・・・そういうわけじゃ・・・」
和 「絶対何か企んでるんだよ。俺達仕事ではしょっちゅう顔合わせてる
じゃない。それなのにわざわざ俺達を引き合わせるようなセッティングなんかしてさ・・・」
智 「あのさ・・・」
和 「はい。」
駄目だ・・・。
言えるわけない。どうせふざけてると言われるだけだ。
松潤は間違い無く俺がニノに特別な感情を抱いてるということに気が付いてる。
だから、『うまくやりなよ』って帰って行ったんだ。
お膳立てして貰っておいて、このまま何も告げずに帰ってしまって
本当にいいんだろうか・・・。
俺が言えずに悩んでいたら、ニノは急に飲みのペースをあげてきた。
智 「ちょっ・・・そんなにペースあげて大丈夫なの?」
和 「最近、寝付きが悪いのよね。この位いつも飲んでるし、平気よ。」
智 「でもさ・・・」
和 「あなたももっと飲んだら?全然酔ってないでしょ?」
確かに・・・。今夜は不思議なくらい全然酔わない。
少しほろ酔いならば言えるのかもな。
そのうちニノの頬と耳が真っ赤に染まってきた。
もう、いい加減に家に帰さないとヤバイよな。
智 「それじゃ、そろそろ帰るか?」
和 「うん。そろそろ行きましょうか・・・」
智 「行くって、何処に?」
和 「決まってるじゃん。大野さんの家にですよ。」
智 「ええ?」
和 「ええ?じゃないよ。さっ、早く行きましょう。」
智 「まっ、待ってよ・・・」
ニノはコートを羽織ると俺の腕をぎゅっと掴んで引っ張った。
俺はまだこの時、ニノが自分の事をからかってるとしか思わなかった。
そして俺も慌てて上着を羽織って店を出た。
表に停まってるタクシーの後部座席に俺とニノは乗り込んだ。
和 「運転手さん、○○までお願いしまぁす。」
それは俺のマンションが有る場所。
・・・そうか、俺を先に降ろすつもりだな。
だけど、ニノは俺の肩に凭れ掛かり
和 「今夜は泊めてね。大野さん・・・」
聞こえるか聞こえないかってくらいの小さな声で
俺にそう呟いた。
つづく