truth 16

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第16話 優しい時間

 

 

野鳥の囀りと蝉の鳴き声で俺は目が覚めた。
いつもと違う朝・・・
ダブルベッドに裸のまんま俯せになって寝てる俺。
その隣に好きな人の寝顔。
ふっくらした頬とスッとした鼻筋、そして少し長めの睫毛・・・
夕べ、俺はこの人と結ばれた。
何か夢見てるみたいで、自分で自分の頬を抓って現実を確かめる。

「痛ってぇ・・・」

夢なんかじゃい。思い出したら恥ずかしくなって
一人で真っ赤になる俺。
暫く横向きになって大野さんの寝顔に見惚れていたら
大野さんが目を瞑ったまま俺の方に手を伸ばし
俺を探すように身体に触れた。
そしてそのまま引き寄せられ、すっぽりと抱き締められた。

「起きてたの?」
「おはよ。」
「お、おはよう///」

もう、何の違和感もなく自然にキスを交わす。
そして夕べの疲労感もまだ生々しく残っているっていうのに
朝っぱらから発情して、再び愛し合う。

行為が済んでまたそのまま寝ようとするから
俺は慌てて大野さんを揺すり起こした。

「ちょっと、また寝るつもり?」
「えっ?そうだけど・・・ニノも寝ようよ。」
「駄目だよ。一体何しにここまで来てると思ってんのさ?」
「ええっ?」
「あなた、ここで俺の絵を描くんでしょ?」
「そうだけど・・・」
「寝てる場合じゃないでしょ。」
「確かに・・・」
「分かってるのなら起きて下さい。」
「でも今日は折角なんだしさ、一日こうしていようよ。」
「そりゃ、俺だってそうしていたいですけど、たったの2週間しかないんでしょ?
絵を仕上げないと、何か落ち着かないよ。」
「ううっ・・・分かったよ。起きるよ。」

仕方なくベッドから起き上がり、浴室にシャワー浴びにいく。
俺はまるで嫁さんみたいに、大野さんの着替えやタオルを準備して
キッチンで朝食の支度を始めた。

シャワーを済ませた大野さんが、バスタオルだけ腰に巻いてキッチンに現れた。
それから冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出し、それをグラスに注いで
ゴクゴクと喉を鳴らして飲み干した。

「ちょっ・・・大野さん?着替え置いといたのに。
何で服着ないのよ?」
「えっ?そりゃあ、もっかいニノとしようと思って。」

そう言って後ろから俺の事を抱き締めた。

「もう、何言ってるんですか?」
「んふふふ。冗談だよ。だって暑いんだもん。」
「ほら、朝食出来ましたよ。ちゃんと着替えて来なよ。」
「はぁーい。」
「フフフッ・・・何で子供みたいになってんだよ。」

身体の関係を一度持ってしまうと、もうお互いに恥ずかしいと思う部分を
全て相手に見せる訳だから、この先何も取り繕ったり隠したりをしなくていいから
背負ってた重い荷物を降ろした感覚というか、心が解放される爽快感は有ると思う。
だけど、大野さんは更にそれが分かり易い人だって思った。
確かに打ち明けたのは俺の方だけど、
もしかすると大野さんも最初っから俺とそうなりたくて
この別荘の計画を立てたんじゃないかって思った。

「これ食ったら、めっちゃ美味いカフェが有るからそこに連れてったげるよ。」
「ええっ?描かないの?」
「そこで焼いてるパンがこれまた美味いんだ。明日の朝食用に買って帰ろ。」
「ね?俺の話聞いてる?」
「聞いてるよ。」
「それじゃいつ描くんですか?」
「ニノは心配しなくても大丈夫だって。」
「本当かよ?」

こうまで筆を持とうとしない大野さんを見ると、流石に心配にもなる。
本気で描く気有るんだろうか?
1千万とかの値段付いた絵をまさか一日二日で仕上げられる訳がないもの。
俺が焦ったところで、描くのは大野さんなんだから
本人がその気にならなければこればかりはどうしようもないんだけどね。

結局は大野さんとその後話してたカフェに行ってお茶を飲んで
焼き立てのパンを買い、そこからまた車で教会だったり、ショッピングモールだったり
ほぼ半日完全に軽井沢を二人でデートして過ごしてしまった。
もう、こうなると俺も何が目的でここに来ているのか
もはや忘れてしまいそうになる。

最後に連れて来て貰った雑貨屋さんで、

「おっ、これいいな。買おうか?」

大野さんが見つけたのは、イニシャルモチーフのペンダントだった。

「おいらは和也のK,ニノは智のS・・・良いじゃん。買おう。」

大野さんは嬉しそうにレジでそれを包んで貰った。

「げっ・・・何でこれこんな高いの?一つ29800円もするじゃん。」
「いいじゃん。記念だよ。」
「だって、何だか悪いよ・・・」
「いいんだって。一つくらいおいらからニノにプレゼントさせてくれよ。」

車に戻って、早速そのペンダントを着けた。

「ありがとう。大切にします。」
「んふふっ。気に入ってくれて良かった。」

それから別荘に戻ったのが夕方で既に日が傾きかけていた。
俺達は二人でキッチンに立って、夕飯の準備を始めた。

「結局、一日遊んじゃったね。」
「うん、楽しかったな。」
「本当に大丈夫なの?」
「え?何が?」
「・・・いや、もうイイですよ。」

俺が心配することじゃないんだよな。
だから、もう俺はこれ以上言うのを止めた。
とにかく今はただ、この優しい時間がいつまでも続いてくれたらいいと
心からそう思った。

続く

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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