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truth 17

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第17話 衝撃の過去

 

 

別荘に来てから3日目の夜、大野さんはようやくアトリエで絵を描き始めた。
俺にモデルを頼んだから、俺はてっきり被写体として大野さんの前に立つものだと思ってたけど
実際はそうでは無かった。

「俺、ここに居なくていいの?」
「あ、うん。べつに居ても良いけど、退屈だろ?
居間で好きな事してて良いよ。」
「う、うん・・・」

そう言われても、一人で居ても退屈なんだよな。

「何で俺のこと見なくて描けるの?」
「えっ?あー、おいらの記憶にある映像を呼び起こして描くんだよ。」
「記憶ねえ・・・」
「知ってる?おいらここに来てからずっとニノの事、被写体として見てたんだよ?」
「あっ、だからなかなか描き始めようとしなかったんですか?」
「んふふふ。」

これで謎が解けた。
可笑しいとは思ったんだよ。目的は絵を描くことでここに来たっていうのに
全然描こうとしないんだもの。
俺の事を頭の中に焼き付けて、イメージで描いてくれるんだ。
どんな感じに仕上がるのか、今から楽しみではある。
だって、それって大野さんの目にどういう風に俺が映ってるかって事だもの。

それにしても、あの老人って何者なんだろう?
確かに大野さんの絵の腕前は素人の俺から見ても
かなり凄いとは思うけど、1千万って値打ちが
高いのか安いのか?俺には皆目見当もつかない。
しかもモデルが俺なんかで良いのかなって不安にもなる。

まぁ、大野さんの事だから、素敵に描いてくれるだろうけど。
一つだけちょっと気になる事があって、
あの画廊に飾られてる絵のモデルになってる女性・・・
あれって一体誰なんだろう?
大野さんは彼女じゃないと言ってたけど
本当のところはまだ何も教えて貰っていない。
あの絵を譲ってくれと言われても売り物じゃないからと
頑なに譲らないのもちょっと気になる。

「ねえ?一つだけ聞いてもいいかな?」
「ん?何?」
「あの画廊に飾ってる絵のモデルって誰なの?」

俺がそう聞くと、筆を走らせてたその手が一瞬ピタリと止まった。

「おいらの油絵の師匠・・・」
「あなたに絵を教えた人なの?」
「そう。」
「付き合ってたの?」
「・・・そんなんじゃないよ。前にも言ったよね?」
「ホントにぃ?」
「何?気になるの?」
「そりゃー、気になるでしょ。普通・・・」

大野さんは筆をその場に置いて、俺の腕を引き優しく抱き寄せた。

「おいらが付き合ってる人は、ここに居るじゃん。」

そう言って顎を引き上げて唇を重ねた。

「ダメだよ。俺、べつに邪魔しようと思って話し掛けたんじゃないからね。」

俺は慌てて大野さんから身体を引き離した。
今のキスで胸がキュンとなったのはなったけど
なんか、女の人の話を胡麻化されたような気がしてならない。

「もう、今夜はやめとくかな。」
「えええっ?まだ1時間も描いてないですよ?」
「うん・・・何か集中出来ない。」
「俺が色々質問するから?」
「うん、そうじゃないんだけど、何か気が散った。」
「ゴメン、俺あっち行ってるから。」

俺はモヤモヤしたまま居間に戻りゲームを始めた。
ちゃんと教えてくれないから余計に気になるんだよ。
だって、今だって明らかに様子がおかしかった。
その事は幾ら俺でも話したくないって、そんな顔をした。
それから30分くらいして、大野さんが居間にやって来た。

「あれ?もうやめたの?」
「ううん、休憩タイム。」
「コーヒーでも淹れましょうか?」
「あ、うん。」

俺はマグカップにコーヒーを淹れて大野さんに手渡した。

「はい、どうぞ。」
「お、ありがと。ゴメンな。ほったらかして。」
「全然、気にしないでいいよ。」
「さっきの話だけど・・・」
「え?」
「ほら、画廊のあの絵の女性。」
「あぁ・・・」
「あの人が真理さんだよ。」
「えっ?それって・・・」
「うん。3年前に亡くなったんだ。」
「そ、そうだったんだ。」
「自殺したんだ。」
「ええっ?」
「話すと長くなるけど、色々とあってさ・・・」

大野さんの口から衝撃告白。
その真理さんって人は大野さんに絵を教えてくれた人というのは本当らしい。
真理さんは大野さんの絵の才能を認めてくれてたらしく
真理さん本人が自分の事を描いて欲しいと大野さんにお願いしたらしい。
当時真理さんは結婚していたそうだが、旦那さんから受けていた暴力行為に
酷く悩まされてたらしい。
ある日旦那さんは真理さんが大野さんと付き合っていると勘違いしたらしく
大野さんに多額の慰謝料を請求したという。
真理さんはその後遺書を残して自殺・・・
その遺書の中に旦那さんからのDVの事実や
大野さんとの関係について、何も無かったのだと言う事も
こと細かく書き記されていたから、不倫の疑いは晴れたという。

大野さんは彼女とは何もなかったと言うけれど
もしかすると、その真理さんって人は
大野さんの事が好きだったのかも知れない。
これは俺の直感でしかないけど、恐らく精神的に追い込まれてる中
大野さんに絵を描いて貰ってる時間は癒しだったに違いない。
だから旦那さんの怒りの矛先が大野さんに向いた時
きっと彼女は責任を感じたのじゃないかな。
まあ、よっぽどじゃないと自殺なんてしないだろう。

だけど、真理さんの家族からすると、それでも大野さんさえ現れなければ
真理さんが命を絶つ事は無かったって思ってるのかも。
だから、大野さんが法要に包んだお金を突き返して来たんじゃないのかな。

ふと思ったんだけど、俺達って似てる。
大野さんもある意味大変な事に巻き込まれた感じなわけで。
俺は俺で二人の人間を殺した事にされてしまった。
今思えば、大野さんが俺の証人台に立ってくれたのは
まるで他人事には思えなかったんじゃないだろうか。

「ごめんな。暗い話して・・・もう今の話忘れてくれ。
もう全て終わった事だし、ニノには何も関係のない話だからさ・・・」
「う、うん・・・」

大野さんはそう言って再びアトリエに戻って行った。

続く

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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