truth
第24話 祭りの夜の出来事
「あの・・・俺って・・・」
「ん?」
「あなたの恋人って事でいいの?」
「えっ?じゃなかったら何なの?」
「そ、そうだよね。そうじゃ無かったら何なんだって話だよね。」
「ニノは恋人じゃ不満?」
「ううん。そうじゃないけど・・・」
「けど?」
「ちょっと驚いちゃって。」
「どうして?」
「もっとご両親とかには隠すかなって思ってたから・・・」
「どうして隠さなきゃならないの?おいらは昔から父ちゃん母ちゃんには
隠し事はしない主義なんだ。」
「で、でも・・・俺、男だし・・・」
「関係無いよ。」
「う、うん・・・あなたはそうかもしれないけど。」
「うちの親は喜んでくれてる。見てたら分かるでしょ?」
「うん、だから驚いてるんだよ。」
「おいらが好きになった人を反対とかする人達じゃないよ。」
「うん、確かに優しそうなご両親だよね。」
っていうか、おいらが好きな人って・・・
そういうこと、あまり面と向かって今まで言ってくれなかったから
嬉しくて泣きそうになった。
「そろそろ帰ろうか?もう会場向かわないと花火始まっちゃうね。」
「うん・・・」
俺達は二匹の犬の散歩を終えて再び大野さんの実家へと戻った。
それからその後直ぐにおばさんが車で花火大会の開場近くまで
車で俺達の事を送ってくれた。
「帰るときにまた電話しなさいな。迎えに来てあげるから。」
「いいよ。帰りは道も混むだろうから自分たちで戻るから。」
「あんたは良いけど、ニノくんが心配なのよ。」
「あ、おばさん、俺大丈夫です。」
「ダメよ。遠慮とかしないで良いんだから、電話しなさいな。
ここのコンビニの辺りまで迎えに来るから・・・」
「わ、分かりました。」
「それじゃ、ゆっくり楽しんでらっしゃい。」
おばさんは俺達を降ろすと、そう言って帰って行った。
「随分気に入られたもんだな(笑)」
「ええっ?そうなの?」
「ただの友達だったらあそこまでしないと思うよ。」
「もう結婚するとか思ってるんじゃないですか?」
「んふふ・・・多分ね。」
「えええっ?」
「いいじゃん。それでも・・・」
「い、いいんだ?」
「おいらはね・・・あ、腹減ったな。何か食べ物とか買って場所確保しようか。」
「う、うん。」
会場には夏祭りさながらのイカ焼きとかたこ焼きとか・・・
色んな出店が立ち並んでて、俺達はそこでビールとか焼き鳥とかを
調達しようと、行列に並んだ。
「凄い人ですね・・・」
「仕方ないよ。こればっかりは。」
「うん・・・」
「あ、ニノ、ここは俺が並ぶからさ、ニノはあっちでビール買って来てよ?」
「うん、いいよ。ビールはそこまで並んでないから行って来ます。」
俺は大野さんが並んでる露天から10メートルくらい先の露店に
ビールを買いに行った。
5分と掛からずに元の場所に戻ったんだけど、
大野さんの姿が何処にも見当たらない。
「あの?すみません。ここに並んでた男の人、何処に行ったか知りません?」
「あ、ほら・・・あの人そうじゃない?」
女性がそう言って指さした先に見えたのは、大野さんと40代くらいの男性だった。
「あ、本当だ。有難うございます。」
誰と話してるんだろう?
俺はゆっくりその場所に近付いた。だけど二人の会話が聞こえてきて
思わず俺はその場に足を止めた。
「久し振りだね。帰ってたんだ?」
「石川さん・・・ご無沙汰してます。」
「もう、外で私に容易く話し掛けないでくれたまえ。」
えっ?石川?石川って・・・確か真理さんの・・・
それじゃ、あの人は真理さんのご主人ってことか?
「しかしどうして真理は君と一緒に死ななかったんだろうな・・・」
な、なんて事を・・・しかもこのDV野郎、大野さんに対して物凄く
意地悪な顔してやがる。
「ねえ、パパ、この人だあれ?」
「あ、ひろしはママとあっちに行ってなさい。」
子供?ママ?
その3歳くらいの男の子は男性の直ぐ後ろに居た母親らしき女性に手を引かれて
二人の傍から立ち去って行った。
「再婚・・・されたんですか?」
「ああ。だが君には関係ない話だよ。」
「お子さんですか?」
「悪いが、あまり私の周りをウロウロしないでくれないか。
もう、真理の事でもようやく忘れて平穏に暮らしてるっていうのに・・・」
何か黙って聞いてたら、一方的に大野さんが悪者みたいに聞こえる。
俺は黙ってられなくて、思わず二人の会話に割り込んだ。
「ちょっと、大野さん?焼き鳥並んでなきゃ駄目じゃない!えっと、この人誰ですか?」
「あっ、ニ、ニノ?」
「何だね?君は・・・」
「それにしても・・・真理さんもお気の毒だよね。相手を間違ったばかりに。」
「は?大野君、こちらは?」
「あ、俺は大野さんの知り合いですよ。」
「全く、野蛮人には野蛮な知り合いしかいないんだな。」
「あなた、奥さんが自殺したのをいいことに直ぐに再婚してますよね?
それも真理さんが亡くなったのって丁度3年前だって言うじゃない。
それなのに可笑しいなあ。子供さんってあれ、3歳?4歳?
計算合わないよね?どーいうこと?」
「ニノ、止めるんだ。」
「えっ?何でよ?どう考えても可笑しいじゃない。」
「し、失礼な奴だ。わたしはこれで失礼する!」
「あーっ、逃げんのかよ。」
「ニノ、いいから!もうよせ・・・」
俺は大野さんに止められ、その石川ってヤツは俺達の前から逃げる様に去って行った。
続く