truth
第27話 迫る真実
「一体どうしたっていうの?」
「松本さん、大野さんが・・・。」
「えっ?大野さん?大野さんって、あの大野さん?」
「そう、俺の裁判で証人台に立ってくれた人だよ。」
「その大野さんがどうかしたの?」
「警察に連行された・・・」
「えっ?」
「何かの間違いなんだよ。ねえ?どうしたら直ぐに連れ戻せるの?」
「話が良く見えないんだけど。とにかく今何処?直ぐにこっちに来れる?」
落ち着こうとするけど、変な胸騒ぎがして頭の中が真っ白になり
松本さんに電話をして助けを求めたのはいいけど、
動揺してるせいでそのいきさつを全然口で説明することが出来ない。
とりあえず俺は電話を切ると、大急ぎで松本さんの弁護士事務所へ向かった。
松本さんに仕事の依頼をするには本来なら予約が必要なんだけど
幸いな事に俺はあの事件以来、松本さんとは友達みたいな関係を築けてたから
特別に飛び込みでも快く面会を承諾してくれた。
血相を変えて松本さんの事務所に駆け込んだ俺に
松本さんはいつもの優しい表情で出迎えてくれた。
そして応接間に通されて、松本さんに最初から事情を説明した。
「ふうん。そういう事か。まさか君と大野さんがそういう関係になってたとはね。
俺としてはそっちの方がビックリなんだけど。」
「そんなのどうでもいいんですよ。それより、松本さん助けてよ。」
「まあ、気持ちは分かるけど、そんなに慌てなさんなって。
それは、結局大野さんに何の容疑が掛けられてるかって話だよね。」
「あの殺された二人の事で質問が有ると言って連れていかれたんだ。
今更あの事件で真犯人を探すようなことを警察がする?」
「それは?大野さんがあの二人を殺害した真犯人ってこと?」
「それじゃなきゃ、あの二人の事で質問なんてしないでしょ?
ねえ、あの事件はこの俺が正当防衛であの二人を殺してしまったって事で
判決も下されてるから、もうそれで終結したんじゃないの?」
「警察が動くって事は、誰かが情報を吹き込んだ可能性が有る。
でも、恐らく確かな証拠が無いから任意同行なんだろうし
それに逮捕された訳じゃ無いから、そこまで心配しなくても
直ぐに戻って来れると思うけど。」
「誰かのタレコミ?・・・まさか・・・」
「心当たりがあるの?」
「週刊〇〇の記者の櫻井さんと相葉さんって人が・・・
ずっと大野さんが怪しいって言ってたんだ。きっとあの二人だよ。
ねえ、松本さん、大野さんを直ぐに連れ戻せる?」
「まあ、ちょっと落ち着こうよ。今回の任意同行が何の事件が絡んでるのか。
まずそこをちゃんと確かめないと。それから、万が一容疑が掛けられそのまま逮捕という
流れになった場合でも保釈金を用意すれば、一時的に見受けすることも出来る。
とにかく、現状では事件かどうかも分からないしね。」
「もし、今夜戻って来なかったら?」
「質疑応答だけなら、直ぐに戻れるよ。」
「戻って来なかったら?」
「心配性だなぁ。そうだ、その週刊〇〇の二人にも確認してみたら?
何か知ってるかも知れないよ。」
「あ、そうか・・・それもそうだよね。」
松本さんからそう言われて、俺は櫻井さんの携帯に電話を入れてみた。
「もしもし、櫻井さん?俺です。二宮です。」
「ああ・・・お久し振りです。どうかされましたか?」
「あなた、まさかあの事を警察に話した?」
「えっ?あの話?」
「大野さんの事ですよ!」
「あの事件の事は、もうこれ以上は首を突っ込むなとあなたから言われて
一切調べていませんし、誰にも口外してもいませんよ。」
「だったらどうして?何で大野さんは警察に連れてかれたの?」
「ええっ?それ、本当ですか?」
「本当に何も知らないの?」
「いや、マジで初耳ですよ。」
あの二人が口外していないと言うのなら、一体誰が?
大野さんを怪しいと思ってた奴が他にも居たってこと?
「本当に何も話してないの?」
「信じて下さいよ。僕はあなた以外の誰にも話しちゃいない。」
「わ、分かった。ゴメンね、突然疑ったりして。」
「いえ・・・何か僕らにお役に立てることがあったら遠慮なく言って下さい。」
「う、うん。ありがと・・・」
もう、大野さんの周りで何が起きてるのか・・・
俺にはさっぱり分からないよ。
ただ、これだけは言える。
あの人は疑われるような事は何もしていない。
ただ、俺と同じで何者かがあの人の事を陥れようとしてる事だけは確かだ。
「松本さん・・・」
「何か分かった?」
「ううん、櫻井さんは誰にも話しちゃいないって・・・」
「そうか・・・それじゃ一体誰が・・・」
「それは俺にも分からない。でも・・・もしかすると・・・」
「えっ?」
「俺の正当防衛を策略した犯人が大野さんの事も陥れようとしてるんだ。
恐らく同一人物だって俺は思う・・・」
続く