truth 29

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第29話 容疑者

 

 

「何かの間違いでしょう。あの石川さんに限って、そんな・・・
再婚相手の連れ子さんかもしれないし・・・」

このおばさん、どんだけあの男に洗脳されてんだよ。

「悪いけど、俺はこの目でちゃんと見ましたからね。
その子、あの石川ってヤツにそっくりでしたよ。
あいつに何て吹き込まれたかは知りませんけど、大野さんは
娘さんとは単に教師と教え子の関係でしかかなったと聞いてます。
あの・・・一人の人間がえん罪負わされそうになってんですよ。
お願いです。片方の話だけで全てを信じないで貰っていいですか。」
「で、でも・・・」
「あの人を、大野さんを有罪に導いたとしても、真理さんは天国で
悲しむと思います。」
「それじゃ、真理はどうしても自殺だったと?」
「ここから先は俺の憶測にしかならないんで、軽く聞き流して下さい。
石川は再婚相手とは真理さんと結婚している頃からか、
いや、もしかしたらもっと以前から交際していた可能性が有る。
真理さんが亡くなったのが今から3年前。あの子供が丁度3歳くらいだから
どう考えても計算が合わない。
真理さんは自分のモデルを大野さんに依頼し、ご主人からのDVの事を
大野さんに打ち明けて悩みを相談していたみたいです。
真理さんはもしかしたら、ご主人の浮気を知っていたのかも知れませんね。
そして石川は真理さんから浮気の事を責められる前に消そうと企てた。
あたかも真理さんと大野さんが不倫をしているかのように
話を作り上げ、あの二人を使って真理さんを強請った。
二人は多分石川から金で雇われたとかでしょうね。
真理さんは精神的に追い詰められ、最後は自殺・・・
まったく、上手く出来たシナリオですよね。」
「ニ、ニノ、凄いな・・・なんか凄腕の推理探偵みたいだな。
でもさ、あの二人ももうこの世に居ないから金で雇われたかとか言っても
そこがなかなか証明出来ないんじゃない?」
「うん。そうなんだよね。だから憶測だってしか言えないんだけど。
でも、あの二人が金で雇われた事を警察に話されてマズいと思ったら結局消すんじゃない?」
「あっ!そうか・・・」
「ね?繋がったでしょ。俺を二人に襲う様に仕向けたのも全てあいつかもね。
あいつは隠れてタイミングを見計らってた。そして俺が意識を失ってる間に
二人の背後から現れて・・・」
「そうか!」
「うん。だから、憶測は憶測でもかなり的は得てると思うけど。」
「お母さん、ニノは去年あの二人に突然襲われるという事件に遭遇してて
気付いたとき既に二人が死亡してたって事件で殺人の容疑を掛けられて
起訴されてたんですよ。」
「そ、そうなの?」
「もうね、訳が分かんないですよ。俺は被害者なのに意識が戻ったら
二人の男を殺してる事にされちゃってて・・・
良かったのか悪かったのか、判決で正当防衛って事で無罪になったけど
催眠ガス吸わされて、俺が殺せる訳ないじゃないですか。
俺はそれでも無罪ならこの事件俺のせいにされても構わないとさえ思ってました。
もう、ごたごたに巻き込まれるの嫌だったから。
でも、俺の事証人台に立ってまで助けてくれた人が大野さんで・・・
そんな大野さんが、今は俺と同じ様な立場で容疑を掛けられそうになってる。
人殺しの罪を被せられた人間が、仮に無罪で釈放されたって
どんだけ社会で生きていくのが大変か分かりますか?
何も悪い事してないのに、犯罪者見る目で見られるんです。
後ろ指刺されて生きて行かなきゃならないんですよ。」
「でも、私たちは娘が他殺かもしれないという線でも調べてくれとは
警察にお話しましたけど、大野さんに違いないとは一言も言ってませんよ。
大野さんに取り調べがいってるのだとしたら、重要参考人ってことで
単にお話を聞いてるだけだと思うけど・・・」
「確かにそうですね。でも、今の俺の話聞いて少しでも大野さんと娘さんを
信じてくれたのなら、今後もし大野さんが間違って逮捕された時は
あの人を助けてあげて欲しいんです。お願いします。」
「た、助けるって言ってもねぇ・・・」
「その時は俺の知り合いの弁護士を連れて来ます。
その人に、包み隠さず話してくれたら良いだけのことです。」
「わ、分かりました。でも、あの石川さんがねぇ・・・信じられない・・・」

娘が暴力奮われてた事を知ってるのに、それでも石川を擁護しようとする。
何でだろう?どうも腑に落ちない・・・
1時間ほど話をして、俺と相葉さんは真理さんの実家を後にした。

「相葉さん、ありがとうね。」
「良かったね。色々明らかになってさ。」
「うん・・・でも驚いたな。相葉さんが真理さんのお母さんに取材してたなんて。」
「でも、旦那の方はノーマークだったな。」
「俺もね、花火の会場で会わなければ気付きもしなかったかも。」
「念の為、明日翔ちゃんと石川議員の身辺色々当たってみるよ。」
「あ、うん。そうして貰えると助かるよ。」
「それじゃ、自宅まで送るよ。」
「うん、悪いね。」

そしてすっかり陽が落ちてしまい、大野さんのマンションの玄関前まで
送って貰った俺は車から降りて、大野さんの部屋を見上げた。
すると誰も居ない筈の部屋に灯りが点ってて
大野さんが戻って来てると分かり、俺は大急ぎで部屋へと戻って行った。

続く

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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