truth 37

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第37話 生還

 

 

ICUの入り口で手渡された入室用の服とマスクを貰い、
俺は急いでそれを身に着けて大野さんが寝ているベッドに向かった。
大野さんは酸素マスクを着けられた状態で、眠ってる。
横に設置されてる心拍の計測器の数値が明らかに弱まってる。
大野さんのベッドの周りで看護師達が慌ただしく動き回ってる。
俺は堪らず寝ている大野さんの手を握り締めた。

「大野さん!何寝てるの?起きろよ!」

俺の後ろの方で遅れてやって来た大野さんのご両親のすすり泣く声がする。
俺もボロボロに泣きながら大野さんに語り掛ける。

「ねえ、智・・・俺を置いて行く気かよ?
・・・ううっ、そんなの絶対許さないから・・・
あなたは俺とシカゴで暮らすんでしょ?
まだ二人でやりたい事、山ほどあるのに・・・
お願いだから・・・俺を一人にしないで・・・
これからはあなたの言う事は何でも聞くから、
だから・・・お願いだから目を覚まして!」

その時だった・・・
微かだけど、間違いなく大野さんの唇が動いた。

「大野・・・さん?」
「・・・の・・・」
「大野さん!」

そして、次の瞬間大野さんが微弱ではあるけど俺の手を握り返した。

「せ、先生!大野さんが!」

俺は近くに居た医師に大野さんの意識が戻った事を伝えた。

「大野さーん?分かりますか?大野さーん?」
「に・・・の・・・」
「大野さん!俺だよ!俺はここに居るよ。」
「心拍数、血圧、共に安定しています。良かったですね。」
「そ、それじゃ大野さんは?」
「もう大丈夫。峠は越えましたよ。」

大野さんはまだ目を開ける事は無く、うわ言みたいに俺の名前を呼び続けた。
俺はおじさんとおばさんと三人で抱き合って喜んだ。
三人とも嬉し涙なのか何なのか分かんないくらい
ボロボロに涙を流し、一体何に対してなのか分からないけど
お互いにひたすら有難うを言い続けた。
だけど俺はその直後、ホッとしたというのもあるけど
睡眠不足と栄養不足でそのままダウンしてしまった。

俺は点滴を受けたまま死んだように眠った。
一体どのくらい寝てたんだろう?
気が付くと、そこは一般病棟の病室のベッドの上で
カーテン越しだけど、窓際の隣のベッドにも誰かが寝ている事に気付いた。
ゆっくり身体を起こしてそのカーテンを開け、隣のベッドに目をやると
そこには大野さんが眠ってた。
ICUから一般病棟に移ったんだ・・・
もう、あの酸素マスクも心拍計も設置されてなくて
点滴は下がってるけど普通に眠ってるように見えた。
俺は大野さんの横の椅子に腰掛けて暫く大野さんの寝顔を愛おしく見つめた。

「ゴメンね・・・俺のせいで・・・こんな目に遭わせて。」

そう呟いたら、再び熱いものが込み上げて来て
声を押し殺して泣いた。

「ニノ・・・」
「えっ?あ、起こしちゃった?」

大野さんが目を覚ましたから、慌てて手のひらで涙を拭った。
大野さんはゆっくり俺の方に手を伸ばし、俺の頬にそっと触れた。

「ニノの声が聞こえたんだ。」
「えっ?」
「俺を一人にするなって・・・」
「あっ、聞こえてたの?」
「うん・・・あの声で目が覚めたんだ。」
「そっか・・・良かった。」
「おいらの言う事、なんでも聞くんだよね?」
「は?」
「言ったよね?」
「あっ、うん・・・言いましたけど・・・」
「ちゃんと覚えといてね?」
「も、勿論。」
「んふふ・・・ニノ?」
「何ですか?」
「おいら、身体こんなんだから・・・」
「え?あー、何か取って欲しいの?」
「ううん、ちょっと頼みがあるんだけど。」
「ん?なぁに?」
「もっかい言って。」
「え?な、何を?」
「智って・・・」
「あっ///それも聞こえてたの?何だよぉ。ヤダ、恥ずかしいよ。」
「んふふふ。それじゃあ、チューしてくれ。」
「えええっ?ここでかよ?」
「だっておいらからしたいけど、動けないもん。」
「そっか///そーですよね。うん、いいよ。さとし・・・」

俺は若干照れながら最初は軽く触れるくらいのキスをして、
その後めちゃくちゃ気持ち込めた深いキス交わした。
そりゃ、生死を彷徨ってた訳だし、とにかく今回の事で
より一層愛情が深まった訳だから、そうなるよね・・・

「ニノくん、一応ニノくんは今夜まで入院させて貰う様に病院にお願いしといたから・・・」

突然そこにおばさんが現れて、俺達は焦ってキスを止めて
互いに真っ赤になってそっぽを向いた。

「あらっ、やだ。ゴメンね。智はニノくんが居るから大丈夫ね?
あたしはまた明日来るから・・・くふふっ。」

おばさんはそう言って愉快そうに笑いながら病室を出て行った。

「見られたかな?」
「見られたな・・・ま、いいんじゃない?母ちゃんニノの事お気に入りみたいだし。」
「何なのよ?それ・・・」

ともあれ、大野さんは一命を取り止めたけど
刺された傷がかなり深かった為
完治するまでに相当時間は掛かったけど、俺が手取り足取り献身的に付き添って
何とか退院出来るまでに漕ぎ着けた。

続く

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投稿者: 蒼ミモザ

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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