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第8話 画廊での失敗

 

 

俺は大野さんのご厚意に甘えて画廊で働くようになった。
仕事と言っても、絵を見に来るお客さんの接客と、大野さんがピックアップして仕入れた絵画の仕分けが殆どで
ファーストフードの仕事なんかよりも仕事量が少ないから、こんなんで本当にお金なんて貰って良いのかって
なんだか気の毒なくらいだった。

「ニノ、そろそろ休憩していいよ。」

大野さんは、それから俺をニノと呼ぶようになった。

「えっ?もう?さっき休憩したばっかりだよ?」
「いいんだよ。お客さんも途切れてるし、うちは暇なときは全部休憩するの。」
「随分気楽な稼業だね。」
「んふふ。コーヒー淹れたから飲んでよ。」
「もう、そういうことは俺にやらしてって言ってるのに。どっちが雇い主なんだか分かんないじゃん。」
「どう?少しは慣れた?」
「うん・・・絵の事はまだあんまり良く分かんないけどね。」
「ニノが来てからまあまあいい値段の絵が何枚も売れたよね。」
「そう!1枚120万とかの絵を買ってく人とか本当に居るんだね?
もうビックリしちゃった。だって、俺にはその値打ちが正直全然分かんなくって。」
「んふふ。普通の人はそんなものだよ。」
「あ、ね?最初っから気になってたんだけど、あの中央のおっきな絵だけど
あれって値段付いて無いけど売り物とかじゃないの?」

ギャラリーのど真ん中に飾られてある女の人の肖像画。
多分、ここに入って来たら誰もが一番に目に留まると思うほどインパクトを占めている。

「えっ・・・ああ、あれ?あれは売り物ではないよ。」
「あれ凄く良いもんね。値段の付けようが無いでしょ。」
「ええっ?ニノは絵の価値分かんないんじゃないの?」
「分かんないけど、俺はここに飾られてる絵の中ではあの絵がダントツ好きだな。」
「・・・ホントに?」
「え?うん・・・本当だけど。」
「あれね、実はおいらの作品なんだ。」
「えっ?あなたが描いたの?嘘?」
「嘘じゃ無いよ。ようく見てみなよ。端っこにsatoshiってサインしてあるから。」

俺はその言葉に驚いた俺は急いでそのサインを確認しに行った。

「本当だ!satoshiって書いてある。す、スゲーなぁ。」
「んふふっ。」
「ね?この人誰?あなたの恋人とか?」
「えっ?・・・ううん。そんなんじゃないよ。」
「またまたぁ。照れないで良いですよ。凄い綺麗な人だよね。」
「ホント、そんなんじゃないんだ。」
「ふうん・・・」

結局その人が誰なのかはぐらかされてしまった感じだった。

「ニノ、おいらこれから1時間ほど商談有るんで、その間接客お願いしてもいいかな?」
「あ、うん。任して。」
「じゃ、何か困ったこと有ったら電話して。」
「はーい。」

そして、大野さんが席を外して30分程経った時に一人の御老人のお客さんがやって来た。

「こんにちは。ちょっと絵を拝見させて貰ってもいいかな?」
「いらっしゃいませ。どうぞ、どうぞ。ごゆっくりご覧ください。」

老人は隅から隅までじっくりと画廊に飾られてる絵を見て回ると
中央の大野さんが描いた絵の前に立ち止まり、暫くそれを眺めてた。

「あの、すみません。」
「あ、はい。」
「こちらはお幾らでしょうか?」
「え?あ、ごめんなさい。それは売り物じゃないんですよ。」
「ああ、そうなんですか。いや、素晴らしい絵なんで是非お譲り頂きたいと思いましてね。」
「これを描いたのはうちのオーナーなんです。本人が聞いたら喜びます。」
「ほう・・・そうだったんですか。なるほど・・・オーナーはご不在ですか?」
「あ、今ちょっと仕事で席を外してるんです。」
「普段はこちらにおいでになるの?」
「はい。商談がなければ・・・」
「それじゃ、今度直接交渉してみるとしましょう。あ、それじゃ今日はあの絵を頂いて帰ります。」
「ありがとうございます。」

老人は一枚の風景画を購入してくれて、また来ると言って帰って行った。
老人が帰って暫くしたら、大野さんが商談を終えてギャラリーに戻って来た。

「ゴメンね。一人で大丈夫だった?」
「あ、お帰りなさい。うん、一人だけ御老人がみえてね、絵を買ってくれたよ。」
「へえ・・・。初めて見る人?」
「あ、うん。俺は初めて。あなたの絵を欲しいって。見る目有るよね。」
「ええっ?」
「勿論売り物じゃないって断ったけど。あ、風景画を1枚だけ買ってった。」
「ええっ?あの風景画?」
「うん・・・」
「あれ、300万もするのに凄いね。誰だろう?」
「え?嘘?」
「はっ?お金、支払って貰ったんだよね?」
「えっ・・・あれ30万じゃなかったの?」
「さ、30・・・あれ、コピーとはいえクロードモネだよ?」
「えっ」
「モネを知らないの?原画なら数億円はくだらない有名な画家だよ。
限定コピーでも300万円とか平気でするんだ。」
「ど、どうしよ。俺としたことが・・・あ、でもまたあなたを訪ねて来るとか言ってたから。」
「もう、いいよ。しようがない。」
「しようがないって、270万の損害だよ?」
「おいらが留守にしてたのも悪いんだから。」
「そ、そんな。あのお爺さん、きっとまた来るよ。そしたら俺、ちゃんと謝って返して貰うよ。」
「ホント、ニノは気にしなくていいって。」


大野さんはそう言ってくれたけど、桁外れの大失敗に
俺はもうどうにかしないとって、頭の中はその事で一杯になった。

 

 

 

続く

妄想小説が好きで自身でも書いています。 アイドルグループ嵐の大宮コンビが特に好きで、二人をモチーフにした 二次小説が中心のお話を書いています。 ブログを始めて7年目。お話を書き始めて約4年。 妄想小説を書くことが日常になってしまったアラフィフライターです。

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